相棒season11~第1話「聖域」の件 | 香港道楽 弐番館

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永遠のパートナー太之輔との香港旅行が、いつしか太子の両親も一緒の親子旅行に♪いつまでも全員元気で行けるといいナ♥プロフィール画像は太子と太子父のチェックイン風景です

初回は二時間スペシャル。しかも舞台はなんと香港!
こりゃ、観ないわけにはいかねーじゃん!
…と、期待が高まりすぎたせいでしょうか。観終えてからの感想は…。
うーん、ちょっと複雑。
以下、ネタバレありですのでご注意を。
 
どうも全体的に展開が強引。
テレビドラマですから、ある程度の都合主義はやむをえません。
でも、それにしてもさー。
杉下右京、そして新相棒となる甲斐 享(カイト君)がたまたま同じタイミングで香港に。カイト君の彼女がCAで、そのフライトにたまたま客として乗っていた杉下右京にドリンクをこぼしちゃって、だから杉下右京が覚えてて、そしてたまたまオープントップバスで鉢合わせて、たまたまカイト君はその前日に香港の日本領事館に招かれてて、そこでたまたま殺人事件に遭遇してて、つい「隠蔽しろってか」と呟いちゃったのを杉下右京にたまたま聞きとがめられ…って、おいおい、いくらなんでも偶然盛りすぎだろー。
たとえば杉下右京とカイト君の出会いだけでも、もっと自然なシチュエーションで良かったのではないでしょーか。同じホテルに泊まっていてエレベーターでバッタリとか。それで充分なような気がするのですが。だいたい、杉下右京がオープントップバスになんか乗るかと。
また、せっかくの海外ロケなのに、香港らしい場面が少なかったのは残念。チラっと『興記』が出てましたが、ああいうシーンがもっと欲しかったなー。でもまあこれは旅番組じゃないからしょうがないか。
 
ああ、いえいえ、ストーリについて突付き回すのが今回の本題ではありません。トイガンファンである自分にとって、もっと気になったところが。
それは、今回の事件において重要なアイテムとなる南部十四年式拳銃にまつわる問題。
劇中でも説明されておりますとおり、この銃は第二次世界大戦時における旧日本陸軍の制式採用拳銃です。
ではまず、今回の事件における殺人計画の概要について。
 
舞台は香港の日本領事館公邸。
在外公館警備対策官の根津は、総領事である小日向の殺害を計画。
小日向は銃器コレクターで、公邸には多数の拳銃をコレクションしている。
根津はその中から南部十四年式拳銃を選び、こっそりと銃弾を薬室内に送り込んでおく。
これにより南部十四年式拳銃はいつでも発射可能な状態となるが、外部に撃鉄(ハンマー)が露出しないストライカー方式の銃なので、外部からそれとは分からない。
小日向は南部十四年式拳銃を大切にし、しょっちゅう手入れをしている。銃口が自らの方に向いているときに暴発してくれれば、事故を装って殺害出来る。
 
と、まあこーいう感じなのですが、ハッキリ言って、これってかなり無理。てか、ほとんどムリ。
だってさー、事前に薬室内を確認しないまま銃の手入れを行うなんて、まずあり得ないハナシ。銃を扱う上での基本じゃん。
それにしてもマガジンに弾を入れたままコレクションするとは。
まあ百歩譲ってこれはヨシとしましょう。殺害された小日向はものものすごく無頓着で、マガジンには弾を入れっぱなしだし、手入れの前に銃の点検なんかしない人だったと。
…しかしそんなんで、よくこれまで暴発事故を起こさなかったな…。
でも、たまたま銃口が当人のほうに向いたときに暴発が起こるなんて、かなり低い確率です。銃の扱いに慣れた人であれば、そう安易に銃口を自分に向けたりしないし。
まあいいです。これも甘受して手入れの際に暴発が起きたとしましょう。でも小日向が即死するような位置にそう都合よく当たるかぁ?
 
えーい、こーなったらついでだ。気になったところを全部書いてやれ。
 
小日向の銃器コレクションの内容があまりにもチグハグ。古式銃から近代銃まで脈絡なさ過ぎ。フリントロック、ピースメーカー、ウインチェスターライフル、ワルサーP38、SIG P230、果てはS&W M29のブルバレルカスタムとかデザートイーグルって、いったいどーいう方向性だよ。
もうちょっとまとめるべき。今回の展開なら旧日本軍の銃器で統一するとか。
 
小日向の妻、詠美(賀来千香子)がコレクションの銃をかなりお気楽に手にします。これが事件の発端となるわけですが、どうにも不自然。小日向は「いいか、オレのコレクションには絶対に触るなよ」と、詠美をはじめとした関係者にはかなり厳しく言い渡していたはず。銃器コレクターであればそれが当然。
だいたい、弾さえ込めれば発射可能な状態の銃器がむき出しで飾ってあっていいわけないんだよね。ガラスか何かで防護してあって然るべき。
 
二発の銃声の違いを絶対音感で聞き分けるカイト君。脚本としては面白いアイデアですが。
南部の口径は8ミリ。比較的小さな銃弾です。
対する犯人、根津の持つ銃。杉下右京は単に「コルトですねぇ」と言っていましたけれど、もうちょっと詳しく言うとコルト・コマンダー。マガジンにリブが入っていたので、おそらく口径は.38スーパー。
いずれにしても、この二つの銃はまったく違う弾薬を使います。ですから、「二発の銃声は違っていた」という点だけなら、誰にだって明確に分かったはず。銃の種類までは分からないまでもね。絶対音感ウンヌンは、ちょっと余計な演出だったかと。
 
さらにマニアックなお話になりますが、実銃の世界において南部十四年式に用いられる銃弾(8×22南部弾)は非常に稀少とか。だからたとえばアメリカでこの銃を撃つシューターは、使用済みのケースを捨てずに再利用(リロード)したり、場合によっては他機種のカートリッジのケースを加工して使用したりするそうです。
ですから、杉下右京が「弾はカスタムメイドでしょうかねぇ」と言うセリフは良かった。「そのへん、ちゃんと知ってんだぞ」とさりげなくマニアを牽制しています。
あ、そういえば、エンドクレジットにBIGSHOTの名があったもんな。銃器に関するアドヴァイスもしたんだろうな。だったら、もっと細かい考証まで口を挟んで欲しかったな。
しかしさすがBIGSHOT。南部十四年式のステージガンは良く出来ていました。詠美が撃つシーンではちゃんとブローバックし、薬莢が床に落ちてチャリンッと音まで立てたり。
それだけに残念だったのは、役者さんがこの銃を手にしたとき、やたら軽々と扱うこと。
日本では、たとえそれがオモチャであっても、演劇に使われるステージガンであっても、金属製で外装の黒い拳銃は法律で禁止されています。
従いまして、もちろん今回の劇中で使われた南部十四年式のステージガンも材質はプラスチック製。見た目は金属っぽく出来ていまたが、実際の重量はさほどではなかったはず。だからこそ、役者さんたちには演技でもっと「重い感じ」を出して欲しかったところです。
 
以上、なんだか悪口ホーダイみたいになっちゃいましたが、「こーいう楽しみ方をしている人もいる」ということでご容赦を。
もちろん『相棒11』では良かった点も多々あります。
今回の新しい相棒は「杉下右京自らがスカウト」という設定。
そして「カイト君」とニックネームで呼ぶ右京さん。
最初から右京さんがある種の親近感を持ちつつ接した相棒は初めて。
かつては孤独を愛した右京さん、でも二人の相棒と長い年月を過ごすことより、一人では寂しくなっちゃったのかな。ああ、右京さんも歳をとって丸くなったんだな…そんな感じがするのが、なんとなく嬉しいような、哀しいような。
新相棒となるカイト君のキャラも、思っていたより悪くありません。
オシャレで、青臭くて、尖がってて、しかもジョーカノは年上。
いいね~。今風だね~。
初回を観ただけで結論を出すわけにはいきませんが、二話目以降、大いに期待です。
 
(太之輔)