上のCT写真は愛知県がんセンターホームページより(http://www.pref.aichi.jp/cancer-center/

イレッサとは一般名ゲファチニブという薬の商品名である。肺がん治療の画期的な薬として、日本で世界に先駆けて2002年に承認発売されたものの、副作用による間質性肺炎の死亡例が相次ぎ、訴訟問題にまでなってしまっている。ヨーロッパでの承認は見合わせられるらしいし・・・

この薬が画期的といわれているのは、一般的な抗癌剤が無差別的攻撃なのに対して、選択的にがん細胞のみを標的に攻撃してくれるところだ。このような分子標的治療は慢性骨髄性白血病のイマチニブではじめて実用化され、がんの化学療法の世界を大きく進化させている。

この薬の問題の副作用の間質性肺炎の発症率は2%でそのうち1/3から約半数が死亡すると推定されている。

治療のための薬で副作用!!しかも死亡することがあるとは!!と感じる人もいるかもしれませんが・・・がんの治療で副作用がないものはありません。実は、この程度の副作用の割合で驚くことはないです。化学療法は諸刃の剣と言われています。医師がこの武器になれていないと患者さんを傷つけれるのみ。またそのことを患者さんも十分に認識していなくてはならないのです。どんなささいな薬でも手術でも、副作用や合併症のリスクのない治療はありません。あるというなら、それは効果のない治療(というか、やってもやらなくてもいいもの)ですよ。常に、治療をやらないときのリスクとやったときのリスクを天秤に掛けているのです。

たとえば、あなたが非小細胞肺がんで手術不可能、今までの抗癌剤でも無効とします。この薬が10~15%の人に効果があると説明され、でも治療を受けた2%の患者さんに間質性肺炎が出現しその内半数は致死的です。と説明をうけたら、どうしますか?しかも今はだんだんイレッサがよく効くだろうと予想されるタイプというのが分かってきています。さらに副作用の出やすい人のタイプも分かってきています。


ところが、冷静に治療適応を判断すべきところ、”画期的な薬”というとうわさがうわさを呼び、それは”夢の薬”になってしまう。藁にもすがる患者さんの気持ちは分かるけど・・・副作用なんて、聞いていませんよっていうのはどうかと思う。夢の薬に裏切られた怒りはどこへ行くのか。

しかも、今回はメーカーが事前に分かっていた副作用情報を操作していると某NPOは訴えている。これがさらに患者遺族団体の怒りを買って、事態をややこしくしてしまっています。本当なら・・・ホントにばかだ。


一部の肺がん患者さん(10%くらい)には劇的によく効いているお薬。この薬が本当に良く効く患者さんの肺がんの性質を研究し、日本で正確な治療による長期予後が出るのはこれからだというのに。

いまこの薬は世の中の怒りの前に消滅してしまいそうだ。

大きな課題を残して消えてしまう。

本当に使いたい人、使うべき人が使えなくなるのですが・・・(T_T)