No.110 シャルワールの初レイス秘密
んよう、オレだ。最近ロクに更新してなくて悪いな。
初レイス秘密に行った時の記事を届けるぞ。
150レベルになったオレは誰かレイス秘密誘ってくんないかな~レイス秘密誘ってくんないかな~と思いながらかれこれ数ヶ月待ち続けた。その間うだうだしていたら勝手に152レベルまで上がっていた。
サムたちに誘われなかったら一生レイス秘密に行く事なく適正オーバーしていたかもしれない。誘ってくれてありがとう。
それでついにレイス秘密に行く事になったわけだが、しょっぱなからいきなり
「BISさんいないけどよろしくね^^」って言われた。
エーって顔をしてはみたが最初からそのつもりでいた。
で、抵抗品をかき集めてみたが
その気になれば火抵抗90%、光抵抗90%を集める事ができる。
しかし実際装備するとどうしても火抵抗30%チョイ、光抵抗60%チョイしか確保できなかった。
ことごとく光抵抗と火抵抗の箇所がカブってんだよ! そんなに一緒にいたいならOP重複しろコンチクショー!
オレは重要なのは光抵抗だと思った。
火の玉はタゲ取っているやつのところにしか行かないけど、雷は範囲攻撃で全員喰らうもんな。
どうせオレはタゲ取らないだろうし、タゲは全部何も戦士と曲者に押し付けとけばいいやと思って疎かにしていたんだ。
そしたら一匹目のレイスで見事に火の玉喰らってブッ殺された。
いや、火力でタゲを取ったわけじゃなく
画面が固まって動けない → 暴れる → 画面は止まっているけど実際にキャラは暴れて動いている → レイスのタゲを一番に取ってしまったらしい → ファイアーボール → 成仏
こうしてオレは灰で蘇生された第一人者となったわけだ。
後でジェングに話したら「それはちっとも名誉じゃない」って言われた。
その後はタゲを取る事もなく進んだ(誰かがタゲを取るまで近寄らなかった)
物理戦士が二人もいるとワイトのHPもガリガリなくなっていくから面白い。
それにしてもダメ差が前より一段と出るようになったな;;
こんなんじゃ普通の野良PTでレイス秘密なんか行けねえよ!
友達PT万々歳だよチクショオオオ!!
ところでさ、サムの衣装ってやっぱり狙っているのかな?
だってほら、サムを見る時はどこを見ればいいのか悩むじゃない。
見ないっていうのはナシだぞ、だって人と話をする時に目を逸らしていたら失礼じゃんか。
いや、そうか、目を見ればいいのか。
何っ、不埒な事考えてないで攻撃しろって?
オレが悪いんじゃない、目のやり場に困る服を着てくるサムの方が悪いんだ!
なんて思っていたら死んでもうた。
この調子で行けば大丈夫…と思われたが!
レイス三匹固まっているところでうっかり大量にタゲ取って死者続出!!
どうにか一匹ずつ釣って端っこによせて倒したぞ!
しかしこのSS、変なところがたくさんあるな!
変なところ
①何も戦士が1歳
②何気にサムの死体が見えている
③曲者が巻物を使って復活、トンズラ
④オレもしっかり死んでいた
⑤復活直後に曲者が雷に撃たれて死んだ
カオスじゃーねーか!w
あっダメぇ!!抵抗無いのがバレるぅ!!
いや~死んだ死んだ、よく死んだ。
それでもここまでくれば後はゴールだけだな!
そして怨霊のスタンを浴びて喜んでいる何も戦士には是非変態の称号を差し上げたい!!
曲者には泣き虫の称号だ!!
男がそんな可愛い泣き声出すんじゃない!!
これか?
二周目に突撃して真っ先に死んだ時のSSだ。
そして相変わらず乙勇者っぷり発揮。
そういえば肝心のワイトの雷シーンが一枚もないじゃん。
雷撃たれている間は赤POT連打に必死でSS撮ってる余裕がなかったんだ、これがギリギリあった1枚だ。
2周目も無事にクリアしたぞ。
いや、無事ではないか…
すっげ~え楽しかったです! 乙ゴキでもよかったらまた連れてってくださーい♪
ジェング:(がしっ!!)
シャルワール:「何だ!?」 ←首ねっこ掴まれてる
ジェング:「装備の見直しだ」
突発小説もどき -A Chird Dream 9-
騒然とする室内の中、彼の意識は別の場所で悪夢を観ていた。
それは彼が大切にしていたものが失われる夢。
抗っても消失の加速は止められず、更に失ってゆくばかりの悲しい夢だ。
その夢は過去に実際起きた事で、今もよく覚えている。
忘れられない記憶。
忘れられない夢。
二度と繰り返したくない夢。
けれど運命は残酷なものに限って繰り返される。
この夢も、それを暗示させていたのだろうか…
-A Chird Dream 9-
「畜生……忌々しい……!!」
手の骨が折れるほど壁を強く殴り、その男は憎しげに歯を鳴らした。
暗い室内を照らす蝋燭の灯火は頼りなく、壁を叩いた程度の風圧でも消えてしまいそうだった。
「よせよヴィレン、肋骨に響くぜ」
傍らで殺気が撒き散らかされているというのに、その男は視線一つ向けず静かに本を読み続けている。
「落ち着いていられるかよ! こんな屈辱を味わされたのは初めてだっ…あの男、次に会ったら絶対に殺す!!」
蝋燭の灯が激しく揺れ、一瞬消えてまた揺らめきをぶり返す。
殺気に満ちたその顔はそれだけでも相手を殺せてしまいそうなほどに凄まじい。
「悔しいのは分かるけどよ、今考えなきゃいけないのはそこじゃねーだろ」
ページを捲る乾いた音が小さく反響する。
この中ならばどんな音でも反響するほど室内は狭く、室内と呼ぶよりも空洞と呼んだ方がしっくりくる構造だった。
湿気を含んだ冷たい空気、呼吸をする度に肺まで凍りつきそうなこの場所に彼らは居る。
空気は塩気を帯びて苦く、海とは違う水のにおいを運んでくる。
このにおいはそう――― 滝飛沫のにおいだ。
「そこじゃねーって、あの男を殺す以外に何を考えろって言うんだよ? フルーリス」
殺気に満ちた目でフルーリスと呼んだ男を睨む。
それでも彼は怯える事も無ければ気に留める事も無く、淡々と本のページを捲り続けた。
「お前は頭に血が上ると周りが見えなくなりすぎる。あの男が何て言っていたか思い出してみろよ」
「あぁ?」
「“私は五年前に貴方たちの属する盗賊団と戦闘を交えた事がある”――― そう言っていただろうが」
「それがどうした」
「分からねぇのか、あの男は五年前、既に俺らと殺り合っているんだ」
「覚えてねーよ」
「俺も覚えていない。五年前っつったらブリッジヘッドの政府が取っ変え引っ変え差し金を遣してきやがったからな。いちいち覚えてられねーよ」
「じゃあ余計何だってんだ。さっぱり分かんねえ」
「問題なのは既に会ったとかどうとかじゃねえ。…あの男、最初は俺らを見ても分からなかったくせに一発でトワイライト盗賊団と言い当てただろうが」
「…あ」
「俺らの顔を覚えているなら最初から言ってくるだろうけどそうじゃなかった。あの探りといい、先に罠に嵌められたのは俺たちのようだな。やられた」
やられたと言いながらも、フルーリスはさも可笑しそうに笑う。
「面白くねえっ。あの男は何者だ」
「そんなの知るか」
「ああムカつく…あの野郎、殺す前に洗い浚い吐かせてやる」
「ふふ、もしもあの男の目的に俺ら(トワイライト盗賊団)が絡んでいるなら吐かせない訳にはいかねぇよなぁ」
本性を垣間見せながら本が静かに閉じられた。
「そうそう、まだ続きがあった」
本を足元に置くとフルーリスがようやくヴィレンに目を向けた。
「お前は伸びていたから知らないだろうけど、途中で女が来たんだ」
「女?」
「弓使いだったな。結構強そうだったぜ」
「それで?」
「その女が来たお陰で隙が出来てずらかれたけどよ…あの女、男と同じギルド紋章を付けていた」
「ふぅん」
「女も状況をばっちり見ていただろうし、男が口を割れば来るかもしれないぜ、ギルドぐるみで」
にぃ…と、歯を見せてフルーリスが笑った。
「そりゃ骨が折れるな。これ以上折れるなんざ御免だけど」
言いながらヴィレンが包帯の巻かれた胸を叩いた。
言葉とは裏腹に、目は笑っている。
「くく、念の為に柔軟体操でもしておけよ」
「でもよぉ、マジでそいつら来やがったら」
その一瞬、風も無いのに蝋燭の炎が大きく揺らいだ。
「皆殺しにしてもいい?」
その顔は酷く愉しそうで、子どものように屈託無く。
「いいんじゃねえの? 向こうから来たなら正当防衛って言い張れるし。それに生きていようが死んでいようが情報が得られる事には変わりない。寧ろ死体の方がよく喋るって言うしな」
物腰穏やかでも、その目と言葉には確かに狂気が宿っている。
「でもさっさと殺すのもいいけど、俺は生け捕りにして拷問する方が好きだなぁ」
「陰湿な上にサドいんだよお前は。ま、そのお陰で過去に数多の戦士から情報を得られたワケだけど?」
「けっ…でも一応団長の許可は取っておいた方がいいと思うぜ。勝手に暴れるとキレるかもしれねーから」
「おーこわ。そう言えば団長ちっとも戻ってこねーじゃん。どこほっつき歩いてんだ」
「さあねぇ。でもこれはある意味シグナルだから」
「シグナル?」
「団長が姿を消す時はさぁ、いつも嵐が起こる前触れだったじゃん」
その目は嵐の訪れを悦んでいる。
「そう言えばそうだな。…ああ、待ち遠しいな」
赤い舌がナイフの刃を舐めた。
「今度こそこの手であいつを殺すんだ。あの男には手を出すなよフルーリス」
「好きにしろよ」
狂気の演じる酔狂は愚かしくも愉しい夢を魅せる。
今度こそこの手で、彼を。
「それにしてもお前、初黒星を貰ったっつーのに全然悔しくなさそうじゃねぇ?」
悔しいのは分かるなんて言葉、口だけだろうとヴィレンが仄めかすと、フルーリスは口元だけで笑った。
「俺はあの男には興味ねぇよ。俺が殺りたいのはただ一人、アヴェニーだけだ」
その名を口にした途端、フルーリスが狂ったかのように笑いだした。
「俺が殺りたいのはアヴェニーだけ。あいつだけは誰にも渡さない、あいつを殺すのは俺だけだ」
「ちっ、またアヴェニーかよ。お前ってばそればっか」
「言ってろ。今のお前には分かるくせに」
「――― まぁな」
いつの間にか蝋燭の灯が消えていても、二つの狂気はいっそう燃えて闇の中で静かに揺らめいていた。
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意識が浮上している…
待ち望んでいた目覚めがようやく…
「―――……」
目を開けるとそこには、いつもの風景が在るんだ。
シェザがいて、ライゼがいて、シャルワールが居て。
「遅い」と言いながらご飯の準備を急かされて…
…そんな、いつも通りの日常が。
「…………」
「…………」
…それはどう見ても悪夢の続きだった。
「ぎゃあああああ!?」
「やっと起きたか」
ギルドホール内に絶叫が響き渡る。
皆がいっせいに振り返れば、そこには涙目で怯えるジェングの姿があった。
「まだどこか痛むのか?」
「いいいいいえ! それより何で手を握ってるんですか、離してください!!」
全力で首を横に振る。
そこには自分の左手を両手で握り締めているビショップがいたのだ。
彼の顔があまりにも慈悲に満ちていて、怖すぎた。
「うなされていたようだから励ましていたんだ」
ビショップが真剣な顔で言う。
「ひいいいっ、分かりましたありがとうございます! もう大丈夫だから離して…!!」
このままでは逆に大泣きさせてしまいそうだというのに、ビショップは遠慮するなとぐっと手を握り、真剣な眼差しで彼を見詰めた。
ジェングはとうとう泣き出した。
飛び起きるなり大騒ぎをする彼らを尻目に一人の女性が近付く。
「くすくす、それだけ元気があれば大丈夫ね。可哀想だから離してあげたら?」
ぶつぶつ言いながらビショップが手を離す。
やり方は不気味だが本気で心配していたらしい。
よほど怖かったのか肩でゼェゼェ呼吸をする彼の目に、ようやく今の現状が映り始める。
「…ここは…ギルドホール?」
ジェングはこれまでの出来事をよく覚えていないようだった。
それでもマスターの顔を見るなり次々と記憶が蘇る。
「こんな事している場合じゃ…!!」
ジェングは飛び掛るようにマスターの肩を掴んだ。
「落ち着いて、状況はもう私から皆に説明してあるわ」
マスターは動じずに肩からジェングの手を外すと、背を軽く叩いて宥め落ち着かせた。
見渡せば、皆はとうに武装を済ませていた。これからギルドバトルにでも向かうような……いや、戦場そのものに赴くかのような風貌だ。
「乗り込む前にいくつか確認しておきたい事があるわ。ジェング、貴方は何をしていたの? …もとい、何をしていて巻き込まれたの?」
マスターのその問いにジェングが「えっ」と顔を上げる。
皆もそれを聞きたがっており、真っ直ぐにこちらを見詰めている。
「…オレは」
彼の言葉はそこで止まる。
話していいものか迷っているのだ。
トワイライト盗賊団が存在していた事は伝えるべきだとしても、依頼自体は彼らには関係ない……迷惑をかける訳にも行かないだろうと思ったのだ。
「………」
「言えないの?」
ジェングが黙ったまま俯く。
そのまま数秒の沈黙が流れた。
「…そう。言いたくないなら無理に聞こうとは思わないけれど…少し寂しいわ」
「!」
小さな溜息が聞こえ、ジェングが跳ねるように顔を起こした。
…そんなつもりではない。
ただ、迷惑をかけたくなかっただけで…寂しい思いをさせたかったのではない。
背を向け遠ざかるマスター。その寸前に見た寂しそうな顔に心が痛んだ。
「行きましょうみんな、くれぐれも油断は禁物よ」
凛々しく指揮を執る彼女に次いで、皆もいっせいに叫(たけ)びを上げる。
目の前で起きている事なのに、まるで違う景色を見ているような心境がジェングを襲った。
「お前の気持ちも分からんでもないが、もう少し皆を信用してやったらどうだ?」
背後から投げかけられ振り返る。
そこには倒れている間に介護をしてくれていたビショップが腕を組んで立っていた。
「…信用していないつもりじゃ…」
“ない。” その言葉さえ最後まで言えなかった。
呆然と立ち尽くすジェングを見てビショップが苦笑した。
まるで子を見る親のような目だ。
「仲間っていうのはな、困った時に助け合ってナンボだ。例えば俺がお前に助けを求めた時、お前はそれを迷惑だと思うか?」
「そんな事思う訳が無い…!」
「それと同じだ。みんな頼ってほしいんだよ」
「………」
それを聞いてやっと分かった。
何故殴られたのか、何故寂しそうな顔をされたのか…
「………」
あの時は大して痛くなかった頬を今になって押さえる。
今になってやっと痛いと思えたのだ。
「………」
ジェングが徐にビショップに背を向け歩き出した。
マスターの後ろに立つと腕を掴み、こちらに振り向かせる。
「…?」
どうしたの? と、マスターが目で問うた。
「…ごめんなさい」
その声は酷く小さかったけれど、彼女の耳には確かに届いていた。
「怒っていないわ」
彼女はそう言って嬉しそうに笑った。
遠慮がちに言葉を選びながらも、ジェングは皆に全てを話した。
とある人物から依頼を申し込まれた事、それに不審な点がいくつかありながらも請け負った事、クエストを進めながら同時に情報を集めていた事、その途中でトワイライト盗賊団に絡まれた事…
彼らは誰一人嫌な顔をしなかった。
迷惑をかけると思っていたのは自分一人だけだった。
皆、笑顔でお安い御用だと言ってくれたのだ。
…人に頼るという事が、少しだけ分かった気がした。
それがとても嬉しかった。
目尻が熱くなりそれを見られないようと、俯いたまましばらく顔を起こせなかった。
しばらくして。
『おーい、ジェング起きてるかー?』
『!』
不意に脳に直接響いてきた声。
それを聞き届け顔を起こすも、いくら見渡しても声の主は見つからなかった。
この声は。
『お前が寝ている間に先回りさせてもらったぜー』
『えっ……えっ?』
この声はギルド幹部の一人であるシーフの声だ。
言っている意味が分からずジェングはうろたえる。
先回りしたとはどういう事だ。
『ちょっと、どういう意味で…』
『今アルナベルの家を見張ってるとこ』
『!?』
仰天という言葉がぴったりな顔で自分のベルトを漁るとあるはずのものが全部無くなっている。
『勝手にベルトの中身を見ましたね!?』
『はっはっは、細かい事気にすんなって』
普通は気にする。
それでもこのシーフは“普通”ではない事を平気でやってのける人なのだ。
ジェングは責めるのを諦めて大きく溜息をついた。
『それより、もう手は回してあるから心配ないぞ』
『は…えぇ?』
『もう決めてあるんだろ? これからすること』
『………』
『なら話は早いじゃん』
『…さては俺の事付け回していましたね。どこまで知っているんです?』
『多分お前が考えている事なら大体』
『人の心を読まないでください…』
『エスパーじゃあるまいしそんな事できるかよ、お前の考えそうな事くらいすぐ分からぁ』
『でももう皆、トワイライト盗賊団と戦いに行く気満々ですよ』
『だから心配ないって、皆を見てみ』
言われた通り皆を見回すと、数人と目が合い不敵な笑みを返された。
『…貴方って人は。行動が早すぎます…』
『ははは、誉めんなって』
『誉めてません…いや、誉めてますけど』
『じゃ、後は任せたぞ』
『分かりました。…ああ、待って』
『ん?』
『ご心配かけました、色々とありがとうございます』
『いいって事よぉ』
耳打ちはそこで途絶えた。
彼を信じるなら言われた通りにするべきだ。
ジェングが皆に向き直り声を出そうとした、その時。
『ええ加減目覚ませやゴラァーーーーーー!!』
「!!?」
ジェングは脳が内側から破裂するほど凄まじい衝撃を受けた。
「~~~~~!?」
「何やってるのジェング?」
頭を抑えてのた打ち回るジェングを見てマスターが声をかける。
「いっ…いえ、耳打ちが来ただけで…」
耳打ちが来ただけでそうもなるのかと思ったが、マスターも皆も敢えて言わないでおいた。
『あ、やっと通じた…何時間経ったと思ってんねん、勘弁してやぁ』
『らっ…ライゼか? いきなり怒鳴る方こそ勘弁してほしいんだが』
『何時間もずっと繋がるまで耳打ち送っとったんやで! さすがのオレもキレるわぁ!』
『あーごめんごめん…悪かった。で、どうした?』
『おおそうや、シャルワールが誘拐されてん』
「誘拐!?」
「誘拐?」
「あ、いえ何でもないです…失礼」
うっかり叫んでしまい皆から不審な目を買う羽目になった。
逃げるように目を逸らしもう一度耳打ちに集中する。
『誘拐ってどういう事だよ!?』
『(やっぱりこうなるんやな…)どういう事かは知らへんけど、強い男に連れ去られたらしいねん。シェザが救出に向かって数時間前に耳打ちが来たんやけど、シャルワールの生存反応がシーフギルド跡地からするらしいねんて』
『…!?』
『シーフギルド跡地って確か、モンスターハントの称号を持っている冒険者やないと入ったらアカンとこやなかったっけ? 命の保証できへんから』
『連れ去った男って誰だ!?』
『そんなんオレが知る訳ないやん。ジェングと耳打ちが繋がるまで入んなって止めたんやけど、シェザ聞きもせず入ってったみたいでなぁ。それきり耳打ち繋がらへんねん。ちょいヤバいで』
言い方は軽いが声は真剣である。
己の心拍数が上がっていくのを感じながら、ジェングは震える呼吸を必死に飲み込んだ。
『悪かった。本当ならオレもシェザと一緒に行くべきやったのに、事の優先を考えると留まる他なかったんや。跡地の中に入れば耳打ちが繋がらへんみたいやし、誰もお前に状況を伝える人がおらんくなってしまう』
『謝るな! お前の判断は間違っていない、シェザもシャルワールも必ず無事に連れ戻す、お前は家を頼んだ』
『こっちは任しときぃ、そっちも頼んだで…あで! コラ髪引っ張んなや!』
ライゼの声は遠ざかりそれ以来ぷっつりと途絶える。
「………」
呼吸ががちがちと震えている。
誰の目から見ても、ジェングが怯えている事は一目瞭然だった。
「何があった? ジェング」
ビショップが問う。
「…何でもありません、時間を取らせました…私もすぐに武装を済ませてきます」
「待ちなさい、“誘拐”ってどういう事? 何かあったのに隠さないで」
マスターが言う。
逃げるように武具収納庫へ走ろうとしたジェングを掴み無理矢理振り返らせると、彼は酷く怯えた目をしていた。
それを見た皆が驚きの視線を向けてくる。
「しっかりしなさい、貴方がそんなじゃこっちまで調子を狂わされるわ」
気をしっかり持たせようとマスターが声を強くして言う。
ジェングがようやく口を開いた。
「…弟が…シャルワールが誘拐されたと報告がありました。何者かにシーフギルド跡地に連れ込まれたようです」
「シーフギルド跡地ですって? それって…」
今まさに我らが赴かんとしている場所ではないか。
「まさかジェングさんが狙われた理由って、弟さんと関係していたんじゃ?」
ただの思い付きを口にしただけの剣士の言葉に皆がいっせいに振り返る。
「え? 何、何ですか?」
その言葉が重大な鍵となった事が分からず、剣士は皆の視線にびびって後退りした。
「…状況が困難になってきたわね。どうするジェング、貴方も戦闘部隊側に来る?」
一刻も早く駆け付けたいだろう彼の心境を思いながら、マスターがそう問うた。
ジェングは黙ったまま俯き続ける。
部隊員としての正義を貫くか、兄としての務めを選ぶか、今、彼の天秤は激しく揺れている。
見兼ねたマスターが再び強くジェングの腕を握った。
「貴方もこっちに来なさい、弟さんを助けに行きましょう」
その言葉を聞き、ジェングの天秤は片方へ落ちた。
「いいえ、オレはやるべき事を優先します」
その答えにどよめきが起こる。
「弟さんを助けに行かないの? まさか見捨てるの?」
誰かが言ったその言葉にジェングは激しく反発した。
「見捨てません! 必ず助けます!!」
勢いでマスターの手を振り解く。
「必ず生きて連れ戻します、その為にもやるべき事を投げ出して向かう事は出来ません」
「……」
「後ほど必ず合流します、それまでどうか皆さんもご無事で」
「…分かったわ、こちらの事は心配せずいきなさい。皆の命は私が預かっている」
マスターに一礼を返すとジェングは武具収納庫へ駆け込んでいった。
その後姿を見送る皆の目が揺れる。
「…辛いだろうなぁ、親と部隊員の責任に板ばさみにされて。俺なら自分の子どもを誘拐されてあいつと同じ道を選べるか分からんわ」
今まで静観していたウィザードの一人がぽつりと言った。
「行きましょう、私たちには私たちのやるべき事がある、それを全うすればいい」
マスターが指揮を執った。皆の戦意も今まで以上に猛り、戦場へと赴いていく。
忘れられない夢。
二度と繰り返したくない夢。
けれど運命は残酷なものに限って繰り返される。
例えあの夢が未来を暗示させていたとしても、二度と繰り返させはしない。
必ず助けるから、どうか生きていて。
「シェザ…シャルワール…!!」
一度だけ家族の名前を強く叫ぶと、彼はそれきり口を噤んだ。
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「あ~~~しんどぉ~~~」
そう言いながら背からどさりとベッドに倒れ込む。
その目元にはくっきりと隈が出来上がっていた。
「大丈夫かロン毛の兄ちゃん」
子どもはとっくに目を覚まして元気にちょっかいを出してくる。
「ロン毛って言うな、オレにはライゼって名前があるんや」
疲労し切っているようだがそれだけの憎まれ口が叩けるなら大丈夫である。
疲労しているのも当然、彼の意識は何時間にも及び精神の深層を彷徨い続けたのだ。
集中力のあまり続かない彼にはさぞ酷な荒行だったに違いない。
「ところでお前、帰らへんのか?」
未だ居座っている子どもを横目で見ながらライゼが言う。
「シャルワールの兄ちゃんが帰ってくるまで帰らない!」
どうやらシャルワールの安否を確認するまで帰るつもりは無いようだ。
「別にオレはええけど、親御さんが心配するんちゃうか?」
「大丈夫、ちゃんとここに泊まるって言ってあるから!」
「お前、最初っからそのつもりか」
意外と用意周到な子どもに呆れながら溜息をつく。
残念ながらライゼに子どもを追い返せるほどの気力は無い。
「そんじゃ、悪いけど事が済むまで帰れへんで、お前」
「え?」
どういう事だ…と聞くよりも先にライゼがベッドから離れる。
杖を規則的な動きで回転させながら集中力を高めると、彼の足元に真昼の太陽のような閃光が浮かび上がった。
魔法陣だ。
「…!」
魔法、それを初めて見る子どもは腰を抜かしそうなほどに驚いた。
「トルネードシールド」
普通の声とは違うその声に魔力は反応する。
呪文を媒介として召喚された魔法は彼らを爆風で覆い包み一瞬にして消えた。
咄嗟に腕で視界を覆い、風が止まったのを感じて目を開ければ、そこにはあれだけの爆風に巻き込まれながら何一つ変わらない家の中の景色があった。
「なっ…なっ…!?」
何が起きたと言いたいのに驚きのあまり口が回らない。
子どもは目を丸くしながらライゼを凝視した。
「ああ、敵が入れへんように家の周りにバリケードを張ったんや。目には見えへんけど近付いたら木っ端微塵やで」
それって全く関係ない人まで巻き込まれるんじゃないか…と思うが、そこはライゼの嘘である。
バリケードはあくまでもバリケード、殺傷力は殆ど無く、誰も家に近付けさせないのが目的である。
万が一突破されたとしても、家を任された以上戦う覚悟は既にある。
もちろんこの子どもを守る覚悟もだ。
「ライゼってもしかして…ウィザードなのか?」
「もしかせんでもウィザードや。何や、もしかしてウィザードを見るのは初めてか?」
「初めてだ! すっげぇー、ウィザードって本当に魔法を使うんだな!」
子どもの目がきらきらしている。さっきまで髪の毛を引っ張っていた態度と大違いだ。
「呑気なガキやなぁ、巻き込まれたっちゅーのに」
「?」
「いやいや、何でもあらへん。それよりちょっと休ませてやぁ、もうへとへとや」
再びだらしなくベッドに倒れ込むと反動でベッドが激しく揺れた。
隙丸出しに見えても、彼は必死でバリケード維持に神経を集中させている。
これが事が終わるまでずっと続くのだ。
「オレ大きくなったら魔法が使える武道家になろうかなぁ!」
「は?」
「だってどっちもかっこいいもん!」
「かっこいいて…お前シャルワールが戦ってるとこ見て泣いたやろ? そんな怖がりに出来る訳あらへんて」
「…! う、うるせえっ、もう泣かねぇよ!」
「ぶははは……あでっ! 分かったから髪の毛引っ張んな! 痛いっちゅーねん!」
顔を真っ赤にして喚く子どもを笑ったのも束の間、ライゼは猛反撃に遭い余計体力を消耗した。
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なかがき。
もう完全にオリキャラになりましたね…うん、良し!(コラ
何度も読み返しましたがまだ矛盾がありそうな気がします、ごめんなさい(殴
いつの間にかコッソリ修正されていても責めないでやってください、オロオロ











