回復期の勤めているPTです。新しい職場にもなれてきており、最近は研究などをすすめています。

 


今回は誰もが悩むであろう装具の処方数と作製時期に関して調査をしてみました。


新しい職場では以前の職場と比べ装具処方が少なく、作製が遅いのが気になっているところです。

 

でもどこと比較して少ないのか?遅いのか?全国と比較してどうなのかと思い調べてみました。

 

自分の病院がどの位置にあるのか参考にしていただければと思います。

 

 

高橋紳一、石神重信

防衛医大

脳卒中の装具療法:私のスタンダード 脳卒中急性期の下肢装具の選択

リハビリテーション医学 Vol39.no11 2002

急性期

追跡期間:7年間

発症からの装具処方までの日数:10.8±6.4日(内訳SHB12.9日、SLB8.3日、LLB11.2日)

入院から退院までの日数:SHB23.1日、SLB28.7日、LLB44.6日

石神先生はLLBを積極的に使用しているリハ医で有名です。LLBについての論文は石神先生の名前がよく出てきます。急性期においてですが、装具を作製していることがわかります。追跡期間も7年と長いので参考になる資料だと思います。

 

髙木  聖*1,*2  石田 典子*3  平野 裕滋*3 安藤 直樹*4   尾池 徹也*2  水野 正昇*5

*1髙木プロジェクト*2  尾池整形外科*3 市立四日市病院リハビリテーション科*4 三重短期大学生活科学科*5 市立四日市病院整形外科

脳卒中片麻痺患者の下肢装具作製時期に影響を与える要因についての検討

日本リハビリテーション医学会 Vol47 2010

急性期

追跡期間:16年

脳卒中患者:2848人

装具作製数:272人(一年間で17人)

脳卒中内訳:脳梗塞166人、脳出血106人

年齢:63.1±11.2歳

男女比:男性173人、女性99人

麻痺側:右麻痺129人、左麻痺143人

発症から採型までの日数

1992年 61.1±19.2日

1993年 60.3±26.5日

1994年 74.4±25.2日

1995年 78.4±35.4日

1996年 72.3±30.3日

1997年 64.9±27.1日

1998年 53.6±20.7日

1999年 52.5±26.9日

2000年 56.4±21.6日

2001年 35.4±21.6日

2002年 28.5±16.2日

2003年 20.3±11.7日

2004年 26.8±12.2日

2005年 26.7±11.3日

2006年 19.0±5.7日

2007年 24.0±8.2日

※図を参考

当初は装具作製までに時間がかかり在院日数も長かった。近年では在院日数の短縮により治療手段として装具を作製ように変化していったのではないか。調査期間が私が探したどの文献よりも長く、長期的な経過が確認出来る。急性期においてもこれだけ装具を作製できるのはすごいと思いました。

 

 

 

※以下は論文ではなく学会などの抄録から拾ったものです※

 

高木 聖1), 石田 典子2), 田中 宏明3), 平野 裕滋2)

1) 高木プロジェクト 2) 市立四日市病院リハビリテーション科 3) ユマニテク医療専門学校

片麻痺患者の装具作製時期に関する検討

日本理学療法学術大会 第43回 2008

急性期

追跡期間:10年間

脳卒中患者:1869名

装具作製患者:187名(一年間で18.7名)

脳卒中内訳:脳梗塞116人、脳出血71人

年齢:62.9±11.8歳

男女比:男性119人、女性68人

麻痺側:右麻痺91名、左麻痺96人

発症から採型までの日数:

前期 KAFO 50.7±22.1日 金属支柱AFO 50.3±26.6日 P-AFO 25.7±26.1日

後期 KAFO 25.5±13.3日 金属支柱AFO 25.9±14.4日 P-AFO 25.7±13.1日

前期5年群よりも後期5年群の方がすべてにおいて装具作製期間が早くなった。早期からの積極的な装具療法が浸透してきているのでは。

 

 

高木聖1)今村康宏2)

高木プロジェクト1)済衆館病院2)

回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻痺患者に対する下肢装具作成時期が入院期間におよぼす影響

日本リハビリテーション医学会 Vol48 2011年

回復期

装具作製患者:30名

脳卒中内訳:脳梗塞30名、脳出血7名

年齢:69.3±13.7歳

男女比:男性15名、女性15名

麻痺側:右麻痺13名、左麻痺17名

またまた高木先生です。早期装具処方により早期の立位、歩行が可能となり発症から発症から退院までの期間が短縮されたようです。

 

村松亮一、今井保、尾谷寛隆、山下堅志

国立循環器病センター

脳卒中片麻痺患者の装具作成状況

理学療法学 22巻 1995

追跡期間:2年

脳卒中患者:307名

装具作製患者:18名(一年間で9名)

年齢:62.7±11.0歳

発症から完成までの日数:89.9±32.2日

理学療法開始から完成まで:68.7±30.5日

入院から退院までの日数:109.9±39.9日

1995年と古いものですが、古いからこそ参考になるものだと思います。おそらく急性期病院ですが入院日数も長く、装具作製も遅いです。急性期での入院が短くなったことが、急性期での装具作製までの日数につながっているのを感じさせてくれます。

 

木島亜依

初台リハビリテーション病院

回復期脳血管障害片麻痺患者に対する長下肢装具のエビデンス構築に向けて:治療効果と作製時期についての考察

日本理学療法学術大会 第46回 2011

回復期

追跡期間:1年6ヶ月

脳卒中患者:1046人

装具作製人数:332人(一年間で221人)

発症からの処方日数:KAFO群51.4±24.0日、AFO45.1±45.1日

年間300本以上作製している初台リハ。その数だけでも驚きです。その中でもKAFOを142本作製しているとのことです。KAFOは早期に作製した方が改善度が認められたが、AFOについては日数と運動FIMとの相関はなかったとのこと。AFOを早期に作製する際は慎重にならないといけないかもしれません。早期装具作製の効果を否定する内容は他にあまりみないので考えさせられる内容でした。

 

都志 翔太1), 土山 裕之1), 前田 朋彦1)

1) 医療法人社団 浅ノ川 金沢脳神経外科病院

当院における下肢装具作成時期の違いによるADL能力・入院期間・歩行自立期間への影響

日本理学療法学術大会 第48回 2012

回復期

追跡期間:1年

作製装具人数:45人

年齢:69.6±12.0歳

男女比:男性28人、女性17人

発症から完成までの日数:befor2Mでは39.8±14.1日、after2M群では93.7±28.1日

発症から退院までの日数:befor2Mでは172.2±39.8日、after2M群では219.6±81.0日

b2M群は93.2±32.6日で歩行自立。a2M群は139.4±51.1日で歩行自立。早期装具作製群の方が自立が高いことがわかる。

 

都志 翔太1), 木内 隆裕2), 土山 裕之1)

1) 金沢脳神経外科病院リハビリテーション部 2) 森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科

脳卒中発症から装具歩行練習開始までの日数と,回復期病棟退院時の歩行能力との関係

日本理学療法学術大会 第52回 2017

回復期

追跡期間:5年

作製患者数:149人(一年間で29.8人)

こちらは装具歩行早期開始群の方がFIMが上がりやすいとのことでした。その中で装具を早期作製することで歩行時間や距離が担保されるのでしょうか?しかし装具歩行早期開始群の方が運動麻痺も軽度だったとのことなので単純に装具歩行だけが原因ではないかもしれません。

 

川出 佳代子1), 髙木 聖2), 中村 優希1), 加藤 陽子1), 窪西 洋子1), 林 由布子1), 早川 久美子1), 安井 健人1), 今村 隼1), 早藤 亮兵1), 瀧野 皓哉1), 小川 優喜1), 尾関 伸哉1), 矢田 旭輝1), 今村 康宏3)

1) 済衆館病院リハビリテーション科 2) 髙木プロジェクト 3) 済衆館病院

脳卒中片麻痺患者に対する下肢装具の選択ならびに作製時期と退院時歩行能力についての一考察 長下肢装具に着目して

日本理学療法学術大会 第48回 2013

回復期

追跡期間:5年

作製患者数:43人(一年間で8.6人)

脳卒中内訳:脳梗塞33人、脳出血10人

年齢:70.3±13.5歳

男女比:男性21人、女性22人

麻痺側:右麻痺21人、左麻痺22人

発症から採型までの日数:KAFO群25.0±10.4日、AFO群31.5±16.1日、プラスティック短下肢装具群49.2±15.9日

発症から退院までの日数:KAFO群149.8±55.1日、AFO群139.8±41.2日、プラスティック短下肢装具群173.1±26.7日

採型から退院までの日数:KAFO群124.8±47.5日、AFO群108.2±37.4日、プラスティック短下肢装具群123.9±28.7日

病床数やセラピスト人数の問題、備品の装具が豊富にあるなどその他のバイアスがわからないが、回復期としては5年間で43例と他の発表や論文と比べて少ない印象。プラスティック群だけやや遅い様子だが、発症してから2ヶ月以内には作製をしている。回復期なので入院してから装具作製はすぐに行っている様子がわかる。

 

 

今岡信介1,2, 佐藤周平1, 黒瀬一郎1,2, 外山稔1,2, 佐藤浩二1

1.湯布院厚生年金病院, 2.大分大学大学院医学系研究科

長下肢装具(KAFO)作製時期と身体機能及びADLの関係性

日本理学療法学術大会 第49回 2014

回復期

追跡期間:2年

作製患者数:63人(一年間で31.5人)

脳卒中内訳:脳梗塞25人、脳出血38人

年齢:67.1±9.7歳

こちらはKAFOを早期作製した方が改善し、特に発症から70日以内に完成したものが改善度が高いとのことでした。

 

 

島袋 壮仁1), 多和田 正宏1), 宮越 浩一2), 森 憲司2)

1) 亀田メディカルセンター リハビリテーション事業部 2) 亀田メディカルセンター リハビリテーション科

回復期の脳血管障害患者に対する当院での装具療法の現状分析 リハビリテーション病院入院患者2年間分の調査

日本理学療法学術大会 第46回 2011

回復期

追跡期間:2年

脳卒中患者:245人

作製患者数:41人(20.5人)

発症から完成までの日数:112.7±37.6日

完成から退院までの日数:44.8±31.8日

亀田メディカルセンターでは他の発表と比べ作製時期が遅いようです。KAFOはほどんど作製せずにAFOを作製することが多いようです。装具の備品が多いのでしょうか?

 

 

森田 有紀1), 寺崎 智子1), 佐藤 暁1), 佐藤 孝臣1), 井野邊 純一1)

1) 医療法人 畏敬会 井野辺病院 総合リハビリテーションセンター

当院における下肢装具作成と退院時ADLとの関連

日本理学療法学術大会 第42回 2007

回復期

追跡期間:1年

作製患者:39人

麻痺の程度・入院時の基本動作能力・高次能機能障害・意識障害の有無・作成した装具によって退院時のADL能力の予後予測が行えるのではとのことでした。

 

熊倉 康博1)

1) リハビリテーション花の舎病院リハビリテーション部門

回復期リハビリテーション病院での装具作成について─当院での装具作成の現状をふまえて─

日本理学療法学術大会 第47回 2012

回復期

追跡期間:1年1ヶ月

作製患者:49人(一年間で45.3人)

男女比:男性29人、女性20人

発症から完成までの日数:116.3日

入院から完成までの日数:73.4日

完成から退院までの日数:8.4日

完成後から退院までの日数が非常に短いのが特長的です。課題が見えた中で今後の改善がどのように変化していったのか気になります。

 

村上 賢治1), 松岡 達司1), 河崎 靖範1), 槌田 義美1)

1) 熊本リハビリテーション病院リハビリテーション部理学療法科

脳卒中片麻痺患者に対する早期長下肢装具療法の取り組み

日本理学療法学術大会 第44回 2009

回復期

追跡期間:2年

脳卒中患者数:963人

装具作製患者:127人(KAFOのみ)(一年間で63.5人)

年齢:66.6±12.9人

男女比:男性86人、女性41人

発症から入院までの日数:24±13日

発症から処方日数:15±13日

すべてKAFOの発表なので短下肢装具作成者を含めるともっと多くなると予想されます。67.7%がAFOに移行。41.7%監視以上のレベルの歩行。

 

 

 

以上です。

 

回復期や急性期などでのどの程度で作製されているがある程度分かってきました。装具の作製状況はかなり差があり、どれがスタンダードであり、正解であるかは難しいところがわかります。

 

脳卒中ガイドラインでは早期からの装具での歩行訓練を推奨しています。自分にあった装具で歩行訓練を行うことは機能回復を促すことは様々な論文で分かってきているところですが、早期に装具を作製することは病院により考え方が違いようです。備品の装具が豊富にあり、患者にあった装具が貸し出し出来るのであれば機能回復が望める早期から必ず装具を作製する必要はないかもしれません。

 

また、病院の規模が大きく病床数が多ければそれだけ装具作製数も増えるでしょうし、在院日数が短ければ自宅退院にむけて早期から装具を作製することが多くなるかもしれません。

 

このようにバイアス多いため、単純にうちの病院と比べて、早い、遅い、多い、少ないと判断することは難しいと思います。

 

このような資料をもとに、当病院がどの位置にあり、課題を見つけて、改善をしていくかが課題と調べて感じました。

 

ゆくゆくは装具作製のプロトコールを作製していくことが出来ればなー。装具に悩めるセラピスト(自分もですが)に貢献できたらと思う勉強内容でした。