音楽小説 | じゃすとどぅーいっと!

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ヨノナカニヒトノクルコソウレシケレトハイフモノノオマエデハナシ

Snapshot


夏の暑い日。

友達とグランドで白球を追いかけ走り回る男子生徒を、1人教室の窓から眺める女子生徒。


「あ、またエラーアル。」


零したボールを拾い上げピッチャーへ返すと、かぶっていた帽子を脱ぎ、袖で汗を拭きながら太陽を恨めしそうに睨んだ。


「フフ。」


書きかけの日誌に視線を戻し再びペンを走らせたが、少しするとまた、視線はグランドへと移っていた。


「・・・あ。ナイスキャッチ。」


何故だか自分のことの様に嬉しくなって、頬が緩んだ。


「神楽ちゃん、終わった?」


突然聞こえた声に慌ててそちらを向くと、教室の入り口に立つ妙の姿が目に入った。


「も、もうちょっとネ。」


神楽の座っている席の前に腰を下ろしながら日誌を覗き込み、妙は笑う。


「フフ。随分と時間がかかってるわね。」


「そんなこと・・・ないアル。」


「そうかしら?何か他に気になることでもあるのかと思ったんだけど?」


「べ、別に・・・」


「ふぅん・・・」


意味深な顔をして、チラリとグランドを見遣る。


「・・・野球部、頑張ってるわね。」


「・・・!!え、あ・・・そ、そうアルな・・・」


慌てた拍子に、紙の上をサラサラと走っていたペンの芯がポキっと折れた。


「フフッ。別に隠さなくったっていいじゃない。」


「な・・・何のことアルか?」


「好きなんでしょ?彼のこと。」


「・・・そんなんじゃないネ。そんなんじゃ・・・」


“好き”という気持ちがよくわからなくて。


クラスの友達も先生も、皆大好きだし。

アイツだってその中に入っているけど・・・




―――好き。




何年も経った今。

もう2度と戻らないこの時間が、その意味を私に教えてくれた。






高校を卒業した後、何事もなく過ごしてきた普通の日々。

今日だって、それは変わらないと思っていた。


それなのに―――


ぼんやりとテレビを見ながらご飯を食べていると、玄関からチャイムの音が聞こえて、慌てて口の中のものを飲み込んだ。


「はーい。」


ガチャリと開いたドアの向こうには、懐かしい顔が見えた。


「・・・あ、マヨラー。」


「そんな呼び方するんじゃねぇ。・・・久しぶりだな。」


「お前、ウチ知ってたアルか?」


「志村に聞いてな。」


「ふーん。で、何の用ネ?」


「あぁ・・・実は、な・・・」


旧友の訪問に、少しばかり懐かしさと嬉しさを感じていた神楽の耳に、思いもよらなかった言葉が飛び込んできた。


「・・・え?何・・・言ってるアル・・・?」


「だから・・・・・・総悟が。事故に巻き込まれて・・・」


「死・・・んだ?」


「・・・あぁ。昨日のことだ。」


そう言えばさっき見ていたテレビで、大きな事故のニュースが取り上げられていた。

バスとトラックの接触事故で、バイクに乗っていた人が巻き込まれた・・・とか。


「・・・・・・」


「・・・大丈夫か?」


「・・・うん、大丈夫ネ。」


「そうか・・・・・・じゃあ、また・・・な。」


「うん。・・・・・・あ。」


閉まる直前、呼び止めた私の声に再びドアが開いた。


「どうした?」


「・・・何で?」


「あ?」


「何で、知らせに来たアルか?他の皆のところにも回ってるアルか?」


「いや・・・・・・何で、だろうな。」


「え・・・」


「わかんねぇけど、よ・・・お前には知らせておいた方がいいと思ったんだ。アイツにとっても、その方がいいって。」


「・・・そう、アルか。」


「・・・じゃあ、な。」


「あ・・・あり、がとう。」


「・・・いや。」


ドアが閉じた後も、しばらくはその場を動くことが出来なかった。




放課後の教室で、妙が委員会の仕事を終えるのを待っていた日―――。


手持ち無沙汰で、黒板に落書きを始めたらいつの間にか夢中になってしまって。

後ろから聞こえた笑い声に驚いて振り向くと、総悟がお腹を抱えて笑っていた。


「あっはは!何でィ、そのガキの落書きみたいな絵は。」


「っ、うるさいネ!失礼アル!」


「何コレ?宇宙人?」


「い、犬!」


「犬?こんな犬がいたら、スクープもんでさァ。」


話すのが初めてだった訳じゃないけど、2人きりで話すのはコレが初めてで。

妙に緊張して、うまく話せなかったのを覚えてる。


「コレは?」


「きゅ・・・九ちゃん・・・」


「本人に見せたら絶交されるレベルでさァ。」


「そ、そんなこと・・・!」


「あ、コレ近藤さんだ。」


「あ・・・うん。」


ちょっとの沈黙の後、2人して顔を見合わせて笑い合った。


「あははは!じゃあ、俺が土方さんの描き方教えてやりまさァ。」


「アイツはコレでいいネ。」


「いや、ここはもっとこう・・・」


黒板に落書きをしている総悟の顔を盗み見て、初めてまみえたその笑顔に胸が高鳴るのを感じた。

そして、もっともっと色んな顔を見たいと思った。


「・・・テメェら、何してやがる。」


奇妙な絵で黒板が埋め尽くされた頃、教室の入り口から土方が顔を覗かせた。


2人同時に振り向き、また2人同時に黒板に描かれた土方の似顔絵に視線を戻すと、声にならない声をあげて、2人同時に笑い崩れた。


「オ、オイ。何だってんだよ・・・」


「あー、ダメだ。俺、今まともに土方さんと目ェ合わせらんねぇや。」


「私もネ。だって、コレ・・・あははは!」


そんな2人の様子に怪訝な顔をしながら、土方は続けた。


「まぁ、いいけど。そんなことより、総悟。そろそろ部活始まるぞ。」


「あ・・・もう委員会終わったんですかィ?じゃあ、そろそろ行くか。」


「黒板、ちゃんと消しとけよ。」


「あ・・・私がやっとくアル。」


「あぁ、じゃあ頼みまさァ。それじゃ・・・またな。」


「うん、またネ。」


その日以来、自分の中で総悟の存在が少しずつ大きくなっているように感じた。


気が付けば、いつも視線の先には総悟の姿があって・・・

無意識に、目がその姿を追うようになった。


視線の先にいるアイツが楽しそうに笑ってはしゃいでいるのを見ると、胸がグッと締め付けられるように痛くて。

でも、あの頃の私にはその理由がわからなかった。



学校の近くで行われる夏祭りにクラス全員で参加することになった日―――。


賑やかな雰囲気とたくさんの出店に夢中になって、いつの間にか逸れてしまって。

辺りを見渡しながら皆を探していると、不意に後ろから腕をつかまれた。


「・・・!!な、何アルか?」


「何じゃねぇよ。花火の時間になるから場所移動するって言ってたじゃねぇか。」


「あ・・・き、聞いてなかったアル・・・」


「ったく、何やってんでさァ。・・・ほら、コッチ。」


そのまま手を引かれてグイグイと進む背中を見ながら、嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちになったのを覚えてる。


皆のいる場所に着いたと同時に花火が打ち上がって。

息苦しくなるほどの人で溢れ返った河川敷。


人ごみに埋もれてしまいそうになっている私の腕をまた掴んで、庇うように自分の前へと引き寄せたアイツが、花火を見ながらポツリと呟いていた。


「きっと、いつまでも忘れらんねぇや・・・」


それが、今この瞬間のことだったのか、それとも・・・。

よくわからなかったけど、その時のことを思い出した私の頬を、色々な想いが伝って落ちた。




何かが変わってしまうことが怖くて、何も出来ずにいた。

そうすれば、ずっと友達のままいれる気がしていた。

終わりが来ることなんて、考えもしなかった。


悔いている訳じゃない。

果てしない時間の中で、アイツと出会えたことが何よりも私を強くしてくれた。


だから―――


2人で過ごした日々を、この胸に焼き付けよう。


アイツのことも、アイツとの想い出も。

アイツに対する、私の気持ちも。


思い出さなくても、大丈夫なように。

無邪気に笑うその顔と響くその声が、目を閉じればいつまでも色褪せることなく浮かんでくるように。


この先、もし他の誰かを好きになることがあったとしても。

アイツは、ずっと特別で。大切で。

私の中で、いつまでも大きな存在であることは、この先ずっと変わらない。



また廻ってくるこの季節の中。

青い空に向かって高い煙突から立ち上る白い煙に小さく声をかけた。


「・・・私も、忘れないアル。」



                                         ~END~




Theme : ガーネット  by 奥華子


―――――――――――――――――――――――――――――――――


≪あとがき≫


前回教えていただいたオヌヌメの曲の中から、1曲選ばせていただきましたw


聞いたことくらいはあったけど、歌詞は見たことなかったし最後まで聞いたこともなかったんで、改めてちゃんと聞いてみました。

こういう、ストーリーっぽくなってる曲は書きやすかったりしますねw


ただ、イメージはスッと浮かんできたんですが・・・誰で書くかでものっそ悩みまして(;´Д`)


聞いてすぐに、3Z設定の神楽がいいんじゃないかと思ったりしたんですが。

神楽がメインだと、そりゃあもう当然の如く総悟が相手になるじゃないですか。←


そしたら、「この2人で“2度と会えない状況”というのをどうやって作り上げればいいの・・・?」みたいな。


それを考えると、「原作でそういう設定になっているCP・・・じゃあ土ミツか・・・?」と。


だけど、この曲に沿って書くとなるとメインは女の子でなきゃいけなくて、尚且つ女の子がいなくなる立場じゃダメなんですよね。

いや、ダメってこともないけど何か違くなっちゃうんですよ。


で、その他のCPでも色々考えてみたんですけど。

カッチリと当てはまるようなものが思い浮かばずorz


「夢にしとこうかな・・・」なんて思ったんですけど、「夢にするなら結局CPでも一緒じゃん?」と思い直して、原点に戻りましたw


んで、それから。

今度は“2度と会えない状況”ってとこに悩みまして。


すぐに思いつくのは、「まぁ単純にどっちかが死んだことにすればいいじゃない」なんですよね。


でも、前々からいってるとおり、“死ネタ”を書くのはすごく抵抗がありまして。

死んだら何かかっこいいじゃん?泣けるじゃん?みたいなのは嫌なんですよ。


文章力のある方なら、そんな薄っぺらいストーリーにはならないんですけど、自分には無理なモンで・・・orz


じゃあ、他の状況を考えよう。

ってことで、次に思いついたのが“結婚”。


だがしかし。

神楽と総悟の話で結婚って、おま。

さすがにちょっと早すぎるし、あんまりリアリティもないだろうし。

歌詞にも沿った感じじゃなくなっちゃうし、結婚したって“会えなくなる”訳じゃないし。


結局、ボツに。←


その後は全く思い浮かばなかったので、この曲がどういうイメージで作られたのか・・・ってのを調べてみました。


ほら、たまにあるじゃないですか。

アーティストさんの実話を元に・・・とか。


で・・・まぁ、これは特になさそうな感じでw

でもでも、そういやこれは『時をかける少女』の主題歌だったんだよな・・・と。


そう思って、今度は時かけのストーリーを調べてみました。


原作も読んだことないし、映画も見たことない。

アニメすらみてない・・・という、全くの無知の状態だったので、ネタバレ見てもあんまり理解できなかったんですが(←)、何となくわかった感じでw


えっと・・・タイムスリップ的な話ですよね?←大雑把すぎるだろ


タイムスリップ・・・余計にネタとして使えないwww

それはちょっと無茶がすぎるwww


で、結局またボツにw


そんでまぁ・・・結果的にまたまた原点に戻りましたwww


総悟ファンの皆様、勝手に総悟を殺してしまってすいません(m´・ω・`)m

悪気はなかったんです・・・ネタもなかったんです・・・←



それから・・・タイトル。

これも結構悩んだ訳ですが。


Snapshot・・・まぁ、スナップ写真ですねw

日常のごくごく自然な部分を写した写真。


想い出を留めておくって部分に焦点をあわせて考えた時、真っ先に思い浮かんだのが“写真”で。

何気ない日常を焼き付ける・・・というところから、Snapshotにしてみました。



んー・・・何か、ものすごくキャラ崩壊してるよなぁorz

特に神楽がw


すごく大人っぽい神楽になってしまったw

総悟もSっ気が全然ないw


こうなってくると、沖神のよさってものが全く感じられないんですがwww

まぁ、その辺はご愛嬌ということでご容赦をw←



最後の部分とか、物足りないくらいあっさりしてしまってるんですが、結局、自分が書きたかったのは回想部分の沖神だったもんで、そこまで妄想が進まなかったんですよね・・・w


ノアクオリティさーせんっした!


歌詞を勝手に解釈して、書きやすいように変えた部分もあるのですが、この曲が好きな方にも楽しんでいただけてたら嬉しく思いますw


素敵な曲をオヌヌメしてくださった漣さん、ありがとうございました!



歌詞はコチラ

視聴はコチラ で。


書ける保障はないですが、ネタを提供していただくのは非常にありがたいですw

オヌヌメの曲がありましたら、さり気なく教えていただけると助かりますw