Cherry my Love
数合わせで参加して欲しいと頼まれた合コン。
相手はギャル系の女の子たちなんだとか。
俺はそういうの趣味じゃないんだけどな・・・と思いながらも、先輩からの誘いを断る訳にもいかず。
嫌々ながらも参加する羽目になった。
まさかそこで衝撃の出会いが待っているなんて・・・
この時の俺には想像も出来なかった―――。
「山崎。お前、盛り上げ役任せたぞ。」
「ちょ、先輩!?勘弁してくださいよ!俺、こういうの初めてなんですから~・・・」
「何言ってやがる。何のためにお前呼んだと思ってんだよ。」
「数合わせって言ったじゃないですか!」
「あー、そうだったか?ま、頑張ってくれや。・・・ほら、来たぜ。」
「えええ!先輩ぃぃぃ~!」
俺の抗議の声も空しく・・・すっかり女の子に夢中になってしまっている。
「こんばんは~♪」
なんて普段聞いた事もないような甘ったれた声で挨拶してる先輩たちを横目に、小さく溜息を吐いた。
その溜息すら、盛り上がる先輩たちと女の子たちの明るい話し声に掻き消されるのを感じた俺は、とりあえず何とかこの場を上手くやり過ごす事だけを考えようと思ったのだった。
どこぞのキャバクラにでも来てしまったのではないかと見紛うほど、目の前に座っている女の子たちはド派手な格好をしている。
age嬢かぶれ・・・とでも言うのだろうか。
見た目で判断するのは失礼な事だけど、今日この場所に来ていなかったら、俺とは一生無縁なタイプの女の子たちだと思った。
「ほら、山崎!」
小声で呼ばれ、肘でグイグイと合図をしてくる先輩に苦笑しながら、この合コンの幹事を仰せ付かる事となった。
「えぇと・・・じゃあまず、自己紹介でもしましょうか!」
半ばヤケ気味のテンションで切り出すと、緩みっぱなしのだった先輩たちの顔がキリッした表情に変わり、見せ場だと言わんばかりに巧みな話術で自己アピールを始めた。
そんなに慣れてるなら、司会進行もやってくれればいいのに・・・と思いながらも、とりあえず当たり障りのない自己紹介を終えると、次は女の子たちの番。
特に興味がないとは言え、さすがに名前くらいは把握しておかないと後々困ることになるだろうと、顔と名前だけはチェックしておくことにした。
そして、いよいよ最後の1人。
これが終わったら、次は何をすればいいんだろう・・・と考えていた時だった。
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。」
なんて、どこかで聞いた事があるような突拍子もない台詞に、呆気にとられながら目の前で立ち上がっている女の子の顔を見上げた。
何だっけこれ・・・
確か、何かのアニメの・・・
と考えていると、
「な~んて♪えっと~、改めて自己紹介しま~す!チェリーって言います☆元腐女子です!よろしく~♪」
そう言ってニッコリと笑った・・・チェリー・・・ちゃん?
先輩たちはそのテンションに乗っかって盛り上がっているようだけど、俺は未だについて行けずに引きつったままの顔で笑顔を返した。
その後、話し好きの先輩が仕切りだしたので一安心。
何となく周りの雰囲気に乗っかりながら、笑ったりツッコんだり。
臨機応変に対応出来る人間でよかった・・・と、心から思う。
十分に場が温まってきた頃、先輩の1人が席替えをすると言い出した。
先輩たちは狙っている女の子に声をかけていたみたいだけど、正直俺には興味がない。
とりあえず開いている場所へと移動すると、後ろから声をかけられた。
「あの~、隣いいですかぁ?」
驚いて振り返った先にいたのは、先程、自己紹介で大注目されていたチェリーちゃん。
「あ、ど、どうぞ。」
まさかこの子に声をかけられるとは思ってもいなかったので、少し焦りつつも隣の席へと促した。
隣同士になったはいいが・・・何を話せばいいのか。
こんな事なら、もう少しアニメの事でも勉強しておけばよかったんじゃないか。
・・・いや、まさかこの子たちの中に元腐女子がいるなんて、誰が予想出来ただろうか。
なんてグルグルと考えながらも、黙っている訳にはいかないので、気になっていた事を聞いてみる事にした。
「あのさ、何でチェリーちゃんなの?本名・・・じゃないよね?」
「私~、ほんとは“さくら”って名前なの~。だけど、何かダサいからチェリーって呼んでもらう事にしてるんだ~。」
「あ・・・そうなんだ。」
本名がダサいかどうかは別として、それなら“チェリー”も納得だ。
「ちゃんとかつけなくていいから、チェリーって呼んでね☆」
「う、うん。じゃあ、俺も・・・」
「ねぇねぇ、ザッキー。」
・・・ザッキー?
それって俺の事・・・?
「ザッキーはアニメとかよく見る人~?」
あぁ、やっぱ俺の事なんだ・・・
「え・・・うん。まぁ、少しは・・・」
「やっぱり~!何か、ザッキーはちょっとオタクっぽい感じしたんだよね~♪」
「あはは・・・そうかな・・・」
苦笑いを浮かべながら、地味に“オタクっぽい”と言われた事に傷ついていた。
「自己紹介の時のアレさ、確か・・・何とか・・・ハルヒのやつだよね?」
「そうなの~♪私、よくハルヒに似てるって言われるんだ~。」
そう言われてみれば、何となくそんな感じの顔をしているかもしれない。
スタイルのよさそうなところも似てるっちゃ似てる気がするし・・・
「あー、似てる似てる!ハルヒみたいに可愛いね!」
ちょっと過剰なくらいに褒めておけば間違いないだろうと、2割くらい上乗せしたテンションで言葉を返した。
「ありがと♪それでね・・・」
それからは、この合コンがお開きとなるまでアニメの話で盛り上がった。
“元”が付くにしろ、さすがは腐女子。
ネタが尽きる事はない。
何とか俺がついていける内容だったし、話のネタを探す手間も省けたので、そこそこ楽しい時間を過ごす事が出来たと思う。
先輩たちは女の子のアドレスをゲットしたとか騒いでいるけど、俺はもう2度と会う事もないだろう。
街で見かけても、声なんてかけれる訳もない。
1人になった帰り道。
そんな事をぼんやりと考えながら歩いていた俺は、静寂を破るように鳴り響いた携帯の音に、ビクッと身体を強張らせた。
こんな時間に誰だろう?
もしかして、先輩かな・・・
ポケットから取り出した携帯を眺めると、見知らぬ番号からの着信だった。
「もしもし・・・?」
「もしもし、ザッキー?」
この声・・・そして、この呼び方・・・
「えっと・・・もしかして、チェリー・・・ちゃん?」
「うん、そ~。」
「ど、どうしたの?と言うか、俺の番号教えたっけ・・・?」
「さっき~、ゴリリンから聞いたの~。」
「ゴリリン・・・?」
一瞬、誰の事だかわからず眉間に皺を寄せたものの、すぐにその人物の顔が頭に浮かんできた。
「あ、近藤先輩か。・・・・・・で、何か用事だったかな?」
「実は~、終電逃しちゃって~。他の皆は2次会行ってるんだけど~、人数も微妙になっちゃうから、始発まで付き合ってくれないかなぁとか思って~。」
「え、あ・・・そうなんだ。・・・・・・って、えええ!?俺が!?」
「うん♪ザッキーなら話も合うし、また逢いたいなぁと思ったんだけど・・・ダメ?」
―――ドクン。
何だかよくわからないけど、「逢いたい」の部分が妙に俺の中に響いた。
選んでもらえて嬉しいとか、この後どう言う展開になるのかとか・・・そう言う事を思った訳じゃなくて。
とにかく、今思った事は1つ。
この子、可愛いかも・・・
その日を境に、俺たちは頻繁に会うようになった。
毎日、メールや電話で話したり。
お互いの家に行き来するようになったり。
そして―――
いつの間にか、恋人同士のような関係にまで発展していた。
それから半年。
相変わらず、チェリーとの関係は続いている・・・けど。
最近思うようになった事がある。
俺とチェリーはほんとに付き合っているんだろうか・・・?
例えば、デートでファミレスに行った時。
「あー、そう言えば。こないだバイトの時にさぁ・・・」
「んー?」
相槌を打ちながらも、彼女の視線は携帯に釘付け。
俺の方を見るどころか、空返事ばかりしか返してくれない。
例えば、学校帰りに待ち合わせをした時。
「あ、ザッキー!ねぇ、見てコレ!可愛くなくなくない!?」
会って早々、見た事のないヴィトンのバッグを僕に見せ付けてくる。
「え・・・あ、うん・・・・・・そう、だね・・・」
よくわからないけど、俺があげたのはどうしたの・・・?
他にも、珍しく彼女の方からデートの誘いが来て
「ドライブしたいの、ダーリン♪早く迎えに来て来て~! 」
なんて可愛く強請られるものだから、テンション上がりまくりで。
「急いで行くね!」
とか言いつつも、ちょっと気合いを入れて、クローゼットの中を全部ひっくり返す勢いで、1人ファッションショーを始めたり。
だけど、もしかしたらドライブの後に家に泊まる事になるかもしれない・・・
と思うと、そのまま散らかしておく訳にもいかなくて、早く行きたい気持ちとは裏腹に片付けや掃除を始めたり。
それでようやく待ち合わせ場所に着いたと思ったら、結局家まで送らせられただけで「さよなら」。
俺だって、別に今までずっと黙っていた訳じゃない。
「いい加減にしろよ!」
と、怒る事もある。
でも、たまにそんな風にムッとした顔したら、触れるだけの軽いキスをして
「怒っちゃヤ~ダ♪」
なんてお決まりの台詞を言われてしまうと・・・
俺はどうしてだか、それ以上責める事が出来なくなってしまうんだ。
繰り返される「いい加減にしろよ!」も、最近は俺の空回りと言う結果で終わってしまっているんだけれど・・・
振り回されて、いつも虚しくなるのに。
どうして嫌いになれない?相手にもされてないのに・・・
わかっていても、「逢いたい」と言われてしまうと、俺の心は勝手に喜び。
俺の足は、勝手に彼女の元へ向かう。
「黙ってりゃいい気になりやがって!ナメんなよ!お前なんかコッチがお断りなんだよ!いつか見てろ!このサゲマン!」
・・・なんて思う事もあるけど、いつも思うだけで終わって、言えず仕舞い。
それは、やっぱり―――。
いつの事だったか、真夜中に電話がかかってきた事があった。
その日は朝から授業だったし、学校が終わった後は夜までバイトが入っていたから、早めに眠りについていた。
だから、電話で起こされた事にすごく腹を立てた。
「・・・もしもし。」
いつもの10分の1にも満たないテンションで電話に出てみると、電話の向こうの彼女は黙ったまま。
不機嫌なのと、寝起きで頭が回っていなかった俺は、そんな様子をおかしく思いながらも、声をかける事もせずそのまま黙っていた。
どのくらい経ったのかはわからないが、しばらくそうしていると・・・
受話器から突然、グスグスと鼻をすする音と嗚咽が聞こえてきた。
「・・・チェリー?もしかして・・・泣いてる?」
その呼びかけに何の反応もない。
「・・・・・・何かあった?俺でよければ、話聞くよ?」
「っ・・・っっ・・・・・・ザッキィィィィィ・・・!」
ようやく声を発した彼女は、それから堰を切ったように声をあげて泣いた。
しゃくりあげながらも、ぽつりぽつりと悩みを打ち明けてくれた彼女を、とても愛おしく感じた。
原因は、誰にでもあるような人間関係の悩みとかそんな事。
まぁ、そんな事と言っても、彼女にとっては大きな問題だったんだけど。
でも、正直。
俺にとっては、泣いていた理由がどうとかそんな事はどうでもよかった。
ただ、俺を選んでくれた事。
俺を頼ってくれた事が、すごくすごく嬉しいと思った。
彼女とこの先どうなりたいとか、今はそんな事わからないけど・・・
俺はただただチェリーの事が、好き・・・なんだ。
“小悪魔”なんて可愛いレベルのワガママじゃないから、チェリーがワガママを言う度に「いい加減にしろよ!」って言うかもしれない。
だから、いつもみたいに触れるだけのキスをして?
俺は、それだけで強くなれる。
いつも君の傍にいるから。
だから、もう1度キスして?
「ザッキー!早く早く~!」
「今行くから、ちょっと待ってー!」
そして、俺は今日もまた・・・彼女のワガママに文句を言いながらも、どこか嬉しそうに振り回されるのだった。
―――Because I love you so.
~END~
Theme : チェリーチェリー by Acid Black Cherry
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≪あとがき≫
えぇと・・・また、新しいテーマを作って駄作を書き始めましたw
まぁ、タイトル通りに“曲を元に銀魂キャラで小説を書こう”と言うだけのものなんですがw
前々から、曲をテーマに書かせてもらったりはしてましたが、ここまでガッツリと沿うように書いたのは初めてかもしれませんw
今回使わせてもらったのは、上にも描きましたが・・・ABCのチェリーチェリー。
アルバムの曲なんで、ご存知の方はいらっしゃらないんじゃないかとwww
この曲を初めて聞いた時に、すごい面白いと思いましてw
何か話を書きたいなぁとムラムラさせられたんですよw
で、チマチマと書き始めたりしてw
それが・・・去年の秋頃だった気がするw
テーマがあるから難しくはなかったけど、やっぱり書き上がるまでには時間がかかりましたねorz
モチベーションの問題もあったし。
んで、誰で書こうかなぁ・・・と考えて、真っ先に思い浮かんだのがザキでしたww
コレを書いてた頃は、ザキはヘタレキャラってイメージが強かったんでねw
気の強い女の子に振り回されるのがピッタリだとw
今は、黒ザキとヘタレザキが半々のイメージですがw
ぱっつぁんでも考えたんだけど、ぱっつぁんはもっと初心な感じがしたのでやめましたw
大学生の設定なので、二十歳そこそこの年齢だと思ってくださいw
あ、出てきた先輩とかは別に誰でもないですw
近藤先輩の名前は出しましたけどw
ムカつくんだけど、嫌いになれない。
そんな矛盾を、もっと上手く表現したかったんですが・・・
結局、いつものノアクオリティですサーセンwww
最後のgdgdも仕様だと思ってくださいwww←
タイトル見て、「愛しのエリー?」って思った方もいますかね?w
そうです、パクr(ry←オイ
曲に興味をもたれた方は・・・
歌詞はコチラ ←goo音楽サイトへ飛びます
視聴は・・・アルバム曲でPVとかないのでいいのがなかったんですが。
とりあえず、コチラ で。←ニコニコ動画に飛びます
ニコニコユーザーさんじゃない方はサーセンorz
つべでも聞ける事は聞けるんですが・・・本人のじゃなくて、カラオケで歌ったものを投稿したのしかなくてorz
ま、なんやかんやでまた書くと思いますので・・・
オヌヌメの曲とかあったら教えてやってくださいましw