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ヨノナカニヒトノクルコソウレシケレトハイフモノノオマエデハナシ

前々から何度か言ってたけど、うちの実家には2匹の犬がいました。


小学6年生の時に、『周りの友達が飼い始めたから』と言う不純な動機で両親に頼み込み。

当時、まだ犬が苦手だった自分は当然の如く反対されたのだけど、犬の本をたくさん買って色々な勉強をしていた自分の熱意に負けて、許可してくれたのが父親でした。


そして、同年の5月12日。

人生で初めてペットショップに行くことになりました。


お目当てはシェルティと言う犬種の犬。

だけど、なかなかいなくて。

最初に行った店に可愛い柴犬がいて、その犬にしようかとも思ったけど・・・やっぱり諦め切れなくてもう1件行ってみることに。


入ってすぐ、シェルティの姿を探したけど結局そこにもおらず。

ぼんやりとガラスケースを覗いてた時に、「あ・・・」と思ったのが我が家に来た1号くん。


シーズーって犬種は知ってたけど、本で見た時はあまり可愛いと思わなくて気にも留めてなかったのに、まさかこんなに可愛い顔したヤツがいるとは・・・と、ほんとに一目惚れでした。


それから約半年後。

同じくシーズーを飼っている父の知人が、「メスのシーズーいらない?」と言ったのをきっかけに我が家に来たのが2号ちゃん。


親バカみたいになってしまうけど、この子はすごく美人な顔で。

1号くんは、どちらかと言えばちょっとアホっぽい顔をしてて可愛いのだけど、2号ちゃんは普通に整った顔をしてました。


2匹が我が家の一員になってから十数年。

もう、そんなに経つんだなぁ・・・と少し感慨深く思いました。




2号ちゃんは、沙羅って名前。

母親が間違って“チャラ”って呼んだのをきっかけに、“チャ”とか“チャコ”とか原形をとどめてない愛称で呼ばれるようになってたのだけど、ほんとの名前をちゃんと把握してる何気に頭のいい犬でした。


臆病で人見知り。

もちろん、他の犬も苦手。

唯一強気に出られるのは相方だけ・・・って言う、かなり内弁慶なタイプ。

我が家の一員になったのは、沙羅の方が後なのにね。


そんな沙羅が一番懐いていたのは、うちの母親でした。

もう、ほんとにベッタリお母さんっこ。

母親の膝の上や隣ではよく寝ていたけど、他の人の傍で寝ることはあまりなくて。

でもたまに、居間で寝てるといつの間にかお腹の上で丸まって寝てたりする可愛いヤツでした。


人見知りなので、お客さんが来ても絶対に近づかない。

そもそも、チャイムが鳴ると吠える。

猫を見かけると吠える。

他の犬を見かけても吠える。

弱い犬ほどなんとやらって感じでした。


家でリコーダーの練習をしていると、遠くから首をかしげて不思議そうにジッと見つめてくる。

そして、最終的に吠える。


洗濯バサミとかクリップを閉じたり開いたりしながら近づけると、ものすごく嫌そうな顔をする。

そして、結局最終的に吠える。


沙羅が可愛くて可愛くて、何度も何度も嫌がらせのように繰り返して。

だから、あんまり好かれてなかったんだろうなぁ・・・なんて。


噛み癖のない犬だったのか、じゃれてても人の手を噛むことはなく。

怒った時も、噛むことだけはダメだと思っていたのか、噛むそぶりはしても噛んでくることは一切ありませんでした。

相方はたまに噛まれてたけども・・・


リードを離していても脱走したりは絶対にしなくて。

家が好きと言うか、ほんとに母親が好きだったんだろうな・・・と。


小さい時から何気に病気がちで、病院にお世話になることもよくあり。

人見知りと治療の怖さにガタガタと震えながら。

それでも、ただただ大人しくジッと耐えていた沙羅は、ほんとに偉いなって思います。


それから・・・2008年1月末日。

もう2年も前のことになるんですね。


我が家のじゃじゃ馬は、病気で亡くなってしまいました。


調子が悪いのは母親から聞いていたのだけれど、「きっといつもと同じだろう」と簡単に考えていた自分が情けない。

会いに行くこともせず、母親に世話を押し付けていた自分が情けない。


地元の動物病院が、あまり設備の整っていないところだからなのかはわからないけど、病院で診てもらっても原因がわからなかったんだそうです。


父は仕事で無理だし、母は車の免許を持ってないので、大きな病院に連れて行ってあげることが出来ず。

多分、自分がいたら・・・それも可能だったのに。


今更、そんなこと考えても遅いけど。

取り返しの付かないことだけれど。

悔やんでも悔やみきれない。


沙羅がいなくなってから、1度だけ実家に帰った時。

両親から、その時の話を少しだけ聞きました。


部屋の中をグルグルと回り始めて。

外に出たがったり、床を掘ってみたり。

それからどんどん呼吸が荒くなってきて。


一緒に寝ていた母親の顔のところに行って、顔をチョンと近づけて。

居間で父親が使っていた座布団に寝転がって、大人しくなったんだとか。


そして、そのまま。

丸まるようにして、座布団の上で息を引き取った。


母親は、沙羅が近づいてきた時、かわいそうで何もしてあげられなかったって言ってた。


でも、別に沙羅は助けて欲しくてそうした訳ではないと思う。


父親が言っていたのだけど、最後に母親のところへ行ったのは、沙羅なりの挨拶だったんじゃないかって。

「ありがとう」って言ってたんじゃないかって。


自分も、そう思った。




それから、1号くん。

甲斐って名前で、沙羅より半年早く生まれ、半年早く家族になった。

自分が犬を触れるようになってから、初めて我が家に来た犬。


沙羅とは対照的に、おっとりした性格で大人しい。

人見知りは一切なく、他の犬も大好き。

ただ唯一、沙羅だけは苦手。

どちらかと言うなら、おバカキャラ。


小さい時からあんまり家の中で遊びたがる方ではなく、ほとんど寝てばっかり。

あまりにも大人しいから、いるんだかいないんだかもわからないくらい。


だけど、外に出るのは割りと好きみたいで散歩はすごく喜んで行ってた。

脱走することもよくあった。


我が家に来てすぐの頃、散歩コースになってる家の裏の遊歩道にたくさんタンポポが咲いてて、それをめがけて走っては花を食いちぎり・・・口の周りが真っ黄色になるまで遊んでいたのが懐かしい。


特に誰かに懐いてると言うよりは、誰にでも懐いていた。

だけど、強いて言うならば自分に一番懐いてくれていた・・・と思う。

いや。懐くと言うか、どちらかと言えば遊び相手だと思われていたっぽい。


両親や姉に噛み付くことはほとんどなかったけど、自分はよく噛まれてました。

もちろん、じゃれてる中での話だけど。

両手が蚯蚓腫れで真っ赤になるほど、いっぱい遊んだ。


居間で昼寝をしてれば、いつの間にか隣で寝てたり。

足の間で寝てたり。

自分の腕を枕にして寝てたり。

挙句、人の首を枕にして寝始めて、苦しいのなんの。


夜ご飯の時間になって、母親が甲斐に自分を起こすように言うと、ダッシュで走ってきて頭を引っ掻き始めて。

髪の毛噛んだり、耳を噛んだり。

やりすぎなくらいやってくれるやんちゃ坊主。


おかしな話だけど、自分だけにそういうことをしてくる甲斐は弟みたいな、特別な存在でした。


大きな音が大の苦手で、雷や花火大会の日になると部屋の隅っこで蹲って。

家に誰もいない大雨の日、母親が家に帰ってきた時にどこにも見当たらなかったんだとか。


名前を呼んでも出てこない。

探しても見つからない。


そしたらしばらくして、どこからかのっそりと現れた甲斐。

どうやら、雷があまりにも怖くて脱衣所の物置の奥に逃げ込んでたみたいで。

その話を聞いた時、すごく笑ったのを覚えてる。


寝ている時につついても、まったく気にもせず。

悪戯されても嫌な顔もしない。

掃除機掛けるのに邪魔だって言ってもどけやしない。


天然なのか、図々しいのか・・・

よくわからないけど、見た目も中身もアホの甲斐はすごく可愛かったです。


1匹になってから会いに行ったけど、沙羅がいないことで特に何か変わった様子もなく。

もしかしたら、寂しく思っていたのかもしれないけど、そんな素振は見えませんでした。


それどころか、家を出てからまともに会いに行ってない自分を尻尾を振って迎えてくれて。

忘れずにいてくれて、すごく嬉しかった。


だけど・・・昨日のこと。

母親からメールが来てて。


2010年4月末日。

我が家のやんちゃ坊主も、沙羅の元へ向かいました。


老衰だったそうです。

小さい頃から病気一つせず、ワクチンの時以外は病院にも行ったことがなかった甲斐は、沙羅の分まで生き抜いてくれたんじゃないかなって思います。




2匹と家族になって十数年。

19で家を出た自分が彼らと一緒にいられたのは、約6年。


彼らの人生の半分ほどしか一緒にいられなかった。

自分の欲を満たすために飼い始めた犬だったのに、途中で世話を両親に押し付けて家を出た。


ロクに家に帰ることもせず、ただ遠くから「元気にやってるかなー」なんて思うくらい。

帰ったところで、地元の友達と遊びに行ってる方が多くて家にはあんまりいなかった。


甲斐と沙羅は、自分のことを家族だと思ってくれていたのかな。

看取ることすら出来なかった自分を、亡くなる間際に一瞬でも思い出してくれていたのかな。


とてもじゃないけど、自信がない。


だけど、家族だと思ってくれていなくてもいい。

思い出してくれてなくてもいい。


我が家に来たことを、よかったと思ってくれれば・・・

楽しかった。幸せだったと思ってくれれば・・・

それだけで、十分だ。


その記憶の中に自分がいようがいまいが、彼らが不幸でなかったのなら、それだけでいい。




今、昔を思い出しながらボロボロと泣いている自分が、何で泣いているのか・・・


彼らを思っているのか。

それとも、ただ自分が情けなくて泣いているのか。


自分でもよくわからない。

でも、言いたい。

勝手な言い分だけど、言わせて欲しい。


ごめんね。

ありがとう。

お疲れ様。


自分は、甲斐と沙羅が家に来てくれてほんとに嬉しかった。

来てくれたのがお前たちで、ほんとによかった。


心からそう思ってます。


仲が良くなかった2匹のことだから無理だと思うけど、向こうで会えたのなら・・・2匹で仲良く暮らしてください。


そして、いつになるかわかんないけど、自分がそっちに行った時には。

この言葉、直接言わせてください。


甲斐、沙羅。

ありがとう。


ずっとずっと、大好きです。