今回はロープラ民法ⅠのNo.49 「抵当権に基づく明渡請求」の答案を掲載しようと思います。
いつものことながら文章の書き方、表現などに稚拙な点がございますので、お気づきの方はコメントなどでお手柔らかにご指摘いただけたらと思います。
なお、ロープラの答案例については数がまとまればリンクページなどを作成して見やすいように整理しようと思います。
第1.(1)の場合
1.AはCに対して、抵当権(民法369条1項、以下法名略)に基づく物権的妨害排除請求権としての甲建物明渡請求をすることが考えられる。これに対してCは、抵当権は目的不動産の交換価値把握機能しかなく、目的不動産の使用収益関係に干渉することはできないから妨害排除請求は認められないとの反論をすることが考えられるが、かかる反論は認められるか。
2.抵当権は非占有担保であり目的不動産の使用収益権を有さないものであるから、第三者が目的不動産を占有していても抵当権に基づいてこれを排除することはできないのが原則である。
もっとも、抵当権者が抵当権に基づいて占有者の占有を排除することが一切許されないとすると、不法占有者によって目的不動産の交換価値が毀損されている場合にも抵当権者はこれに対抗できないことになり抵当権者の利益が害される。
そこで、抵当権の交換価値の実現が妨げられ、優先弁済権の行使が困難となるような状況がある場合は、例外的に抵当権者の利益を保護する観点から抵当権に基づく妨害排除請求も認められると解する。
3.本件ではCが甲建物を不法占有するために競売手続における買受人が現れず基準価額の見直しがされても競売の見込みが立たない状況にあり、Aが優先弁済権を受けることができない状況に立たされている。したがってAは例外的に抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。
第2.(2)の場合
1.(1)と異なり、占有者が適法な占有権原を有する場合、抵当権者は抵当権に基づく妨害排除請求をすることができるか。
2.前述の通り、抵当権者は目的不動産の交換価値しか把握していないことに加え、適法な占有権原に基づいた占有はそれ自体が直ちに抵当不動産の交換価値を毀損するものではない。
もっとも、抵当不動産の所有者は抵当不動産の使用収益を図るに当たり、抵当不動産を適切に維持・管理しなければならず、抵当権の実行を妨害するような占有権原を設定することは許されない。そこで、①占有権原の設定に抵当権の実行を妨害する目的が認められ、②その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状況が存在する場合は、抵当権に基づく妨害排除請求も認められると解する。
3.本件においてBは2017年5月1日に期間を5年としてCとの間で甲建物の賃貸借契約を締結しており、これにより2022年5月1日までは第三取得者が甲建物を競落しても自由に使用収益できないことから買受人が見つからないという状況に陥っている。したがって、Aの優先弁済権の行使が困難となるような状況はあると言える(②充足)から、Bが甲建物をCに賃貸したのがAの抵当権実行を妨害する目的があったと言えれば、AはCに対して抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。
以上