「パーパットを決めると、シードを落とした時の苦しかったシーンが突然、よみがえってきて・・・。そして真っ白の状態になって泣いてしまった・・・本当に長かった」 (堀琴音)

 

女子ゴルフツアー「ニッポンハムレディースクラシック」で、ついに、堀琴音プロが逆転でツアー初優勝を飾った。

 

試合は、トップを走る若林舞衣子プロと追いかける堀琴音プロとのマッチレースの様相を呈した。

 

ツアー史上最長という北海道苫小牧市・桂ゴルフ倶楽部(6763ヤード/パー72)で行われた。

 

早々に優勝争いはこの2人に絞られた形になってしまったが、手に汗握る緊張感のある試合内容だった。

 

この難しいコースで、3日目、最終日と二人ともノーボギーで回ったことでも分かるが、締まった試合展開だった。

 

そんな中で、堀琴音プロが14番(4メートル)、15番(5メートル)の連続バーディーを奪い14アンダーとして首位の若林プロを捉えた。

 

 

この試合で、琴音プロが最もシビレたパットは、おそらく最終18番ホールの1,2メートルのパーパットだったろう。

 

若林プロは、タップインパーでお先に終了。琴音プロがもしこのパットを外すようなことがあれば、万事休す。念願の優勝はおあずけ・・・

 

琴音プロが、何度も何度も胸に手を当てて深呼吸する姿がTVで映し出されていた。このたった1メートル余りのパットを外した瞬間、夢は「水泡」と化すのである。普段なら何でもないパットなのだが・・・

 

しかし、冷静にパットを沈め、プレーオフに突入した。

 

プレーオフ3ホール目、若林プロがボギー、琴音プロが「バーディー逃しのパー」でついに決着。

 

ネット中継の解説者も言っていたが、今回の掘琴音プロの優勝を引き出したのは、若林プロであるといっていたが、全くそのとおりである。

 

落ち着きのないセッカチなゴルフスタイル?の琴音プロに対し、ゆったりした空気を作り出している若林プロの雰囲気に、いい意味で同化して、ポテンシャルを高められたのが琴音プロだった。

 

今回、見事に復活優勝したが、スランプのサインは17年の大王製紙エリエールレディースの二日目、2番で「アイアンショットが左崖下のOBから始まった」そうだ。

 

「何をやっても、うまくいかなかった。ボールがまっすぐ飛ばないようになり、なんでゴルフをしなければいけないのか・・・。そんなことばかりを考えたら、夜も眠れない。ゴルフをやめたいと何度も何度も思った」 (同)

 

「でも、ゴルフはやめられない。悔しいからです。人生はまだ続くのに、すっきりせずに終わりたくはない。以降は当たって砕けろ、でした」。(同)

 

もがき苦しむ日々・・・。「ゴルフ人生が終わった気がする」と沈んでいたが、今年の開幕前、プライベートでレジェンド不動裕理プロとラウンド。

 

この時の不動プロの「ゆっくり振ればいい」の金言がヒントになったという。

 

ドライバーの持ち球はドローボール。飛距離重視で力みが出る。そこで不動流の’ゆっくりスイング導入。「ドローボールからフェードに変えたら、球筋が安定し、アイアンも良くなったんです」。(同)

 

この時の不動裕理プロの「ゆっくり振ればいい」と言ったのは、ひょっとして琴音プロの性格や所作も含めて、せっかちにならず、落ち着いてプレーしなさい、という含みもあったのかもしれない・・・

 

琴音プロが優勝したことで、女子ゴルフツアー界に、また新しい風が吹いてくるだろう。