「子供の頃、私の夢は世界一でした。でも、こうして全米女子オープンに勝つ日が本当に来るなんて思っていませんでした。」 (笹生優花)

 

米カリフォルニア州オリンピッククラブで行われた今年の「全米女子オープンゴルフ」の勝者は、19歳の日本人(*フィリピンとの二重国籍」)の笹生優花プロ。 2位には惜しくもプレーオフで敗れた畑岡奈紗プロだった。

 

メジャーの試合で、日本人同士のプレーオフ決着なんて誰が想像できただろう・・・

 

過去を振り返っても、岡本綾子プロ、宮里藍プロともに賞金女王に輝いた二人でさえも何年かけても「メジャー」には縁がなかったのだ。

 

それが、初めての海外の試合で「全英女子オープン」に勝った渋野日向子プロといい、19歳という若さで「全米女子オープン」に勝ってしまった笹生優花プロといい、ここへきて、黄金世代や十代の日本人プレーヤーの躍進が目覚しい。

 

男子でも、あの「マスターズ」に優勝した松山英樹プロも含め、今年は、日本人ゴルファーの世界での活躍が目を引く。

 

松山プロの「マスターズ制覇」は日本人初・・・というよりアジア人で初めてグリーンジャケットを着た選手である。

 

ツアープロのケビンナ(韓国系アメリカ人)選手は、自分の試合が終わって帰路についたが、松山選手の優勝見たさにわざわざ会場に戻ってきたという。彼が、優勝した直後に松山選手を祝福していたシーンはTVでも映し出されていた。ケビンナ選手は、松山プロのマスターズ制覇を「予言」していたひとりである。そういえば松山プロが米ツアー初優勝した「メモリアルトーナメント」でプレーオフで破った相手はケビンナプロだった。

 

話を戻す。笹生プロが十代で「メジャー」に勝ってしまった・・・と書いたが、やはりこれからが大変だと思う。

 

メジャーで勝つことが夢だった彼女にとって、こんなに速く「夢を実現」してしまってこれからどんなモチベーションで戦っていくのだろうか?

 

渋野プロでさへ、メジャーを制覇して以来、必ずしも「順風満帆」というわけにはいっていない。スイングを矯正したり、いろいろ試行錯誤をしながら苦労している。 個人的には、メジャーで勝ったスイングを、何故わざわざ替える必要があるのか・・・未だに解らない。

 

渋野プロはパッティングに悩んでいるようだが、これもスイングを変えたためにパッティングのテンポまで狂ってきている。つまり、スイングも、パッティングもリンクしているのだ。

 

さて、惜しくも2位に敗れた畑岡プロ。つい2,3週間前までメジャーでプレーオフに残るような内容のゴルフをしていなかったので、正直驚いている。しかし、今週のようなゴルフが彼女の本来のものなのだ。

 

私は、ツアーに初めて参加して予選落ちを繰り返していた畑岡奈紗プロが、その時以来の「スランプ」に陥っていると見ていた。何故なら、ここまでトップ10入りがないからだ。

 

上昇のきっかけへの伏線は、先週のマッチプレーにあった。「ANAインスピレーション」で初のメジャーを制覇したパティータバタナキットとの対戦。彼女とはジュニア時代からよく知っていて、ここへきてタバタナキットが畑岡プロよりも一歩先を行くようになってしまった。結果はやはり畑岡プロの「完敗」。

 

しかし、負け試合の中で、畑岡プロは相手のスイングを「観察」していた。

 

「ただでは負けられないって(笑)。なにか盗まないとと思って、見ていたらすごくイメージが沸いてきた。彼女のスイングはゆったりしているけど、300ヤードを越える。機械みたいに打つけど、アドレスがまずきれい。わたしもアドレスがしっくりきていないところがあったので、どこか違うのかと見ていて、グリップかなと思った」(畑岡奈紗)

 

そのイメージを参考に右手を上から握るような感じでやるとよくなった。

 

「今までは下から持ちすぎていた。テークバックでまっすぐ引けるようになってトップでいい位置に持っていけるようになった」

さらには「フェースの開閉は左よりも右のほうがやりやすい。ボールを曲げるイメージも右がうまく使えているときはイメージがいい」とドローもフェードも求められるコースに対して打ち分けられるようになってきた。」 (同 )

 

実は、私は畑岡奈紗プロも松山プロのように専属のコーチを付けたほうが良いのでは・・・・と思っていた。

 

しかし、彼女のしたたかな観察力とそれを自分の中に吸収してしまう能力があれば、当面は専属コーチは必要ないのかもしれない・・

 

 

  

* 笹生優花プロはオリンピック終了後は国籍を日本だけにする予定。