佐渡行、その第一日
4時に起床した。まだ夜の帳が下りている。5時には出発せねばならない。直江津港を7時20分に出航する「こがね丸」に間に合わせるためだ。時刻表を逆算すれば、この早起きは不可避な儀式のようなものである。
愛用していたハイエースはすでに手放してしまった。今回は、富士見の「みよこちゃん」を含めた5人での移動である。仕方なく、アルトラパンと軽トラという、およそ旅情には遠い2台に分乗して国道292号をひた走る。私は軽トラのハンドルを握り、助手席には春花が収まった。
6時15分、直江津港着。家族をターミナルで降ろし、私は1人、少し離れた緑地公園の駐車場へと車を走らせた。ターミナル前の駐車場に置けば、明日の夜までに1700円を徴収される。わずかばかりの節約だが、この執着が旅の密度を左右する。
7時10分、乗船開始。狙い通り、乗船口の先頭を確保していた我々は、最上階の遊歩甲板前にあるソファー席を「占領」することに成功した。この「こがね丸」は宇和島運輸から移籍してきた中古船だが、内装がよろしくない。カーペット席ばかりが目立ち、椅子席が極端に少ないのだ。わずか2時間半の航海とはいえ、海を眺めながら腰を下ろせる椅子が恋しい。
9時50分、小木港着。直ちにニコニコレンタカーへ向かう。ここで1台だけ用意されているトヨタ・ノアを借りる。36時間で27000円。離島価格とはいえ、なかなかに強気な設定である。
まずは羽茂の「タガヤス堂」を目指す。そこは桃源郷と呼ぶにふさわしい、静謐な集落であった。佐渡特有の伝統家屋が並び、空気がしっとりと落ち着いている。ここでドーナツを多めに買い込み、真野へと車を走らせた。
昼食は「カフェトレイン」。店主は相当なアメリカ文化の愛好家らしい。店内にはダッジやハーレーのレプリカが並び、ここが佐渡であることを一瞬忘れさせる。
食後、これまた定番の「あめやの桟橋」へ。いつもの構図で写真を撮るが、この「お決まり」をこなすのも旅の義務のようなものだ。
午後は佐渡金山を訪ねた。土曜日だというのに、人影はまばらである。世界遺産登録の熱狂も、はや峠を越したのだろうか。駐車場には10台も停まっていない。1人1500円の入坑料を支払い、暗い穴の中へと足を踏み入れる。 私は、こうした産業遺産に目がない。昨年は夕張の炭鉱を巡ったが、かつて栄華を極めた場所の静寂には、独特の感慨がある。リアルな展示を眺めつつ、往時の喧騒を想像する。
金山を出て、トキテラスへ。トキの姿を探したが、施設内では空振りに終わった。ところが皮肉なことに、道中の何げない景色の中に野生のトキを発見した。いくつか写真に収めることができたのは、幸運としか言いようがない。
16時過ぎ。早すぎる夕食だが、回転寿司の「弁慶」へ。案の定、すぐに満席となったが、我々は余裕を持って席を得た。さすがに本店、ネタの鮮度は素晴らしい。5人で16000円。この満足度を考えれば、極めて値打ちのある出費といえる。
JAのスーパーで買い出しを済ませる。一昨年、昨年の夏には姿を消していた「佐渡バター」が棚に並んでいるのを見つけた。春は乳量が多いのだろうか。そんな小さな発見が、旅の記録に彩りを添える。
宿は「しまふうみ」。一棟貸しの邸宅に、同行の面々は歓喜の声を上げた。 一息ついた後、私と春花は「マノカミーノ」へ向かった。スペイン巡礼から帰還した報告をするためだ。わずか1時間ほどの時間であったが、語らいは大いに盛り上がった。あの巡礼の旅には、なぜこれほどまでに人を共感させる「スイッチ」があるのだろうか。
前日からの睡眠不足が、心地よい疲れとなって全身に回ってきた。22時を待たずして、私は床に就いた。明日の行程を夢に見る間もなく、深い眠りに落ちた。















