「時間を守ってください」は正しい。でも、それだけではうまくいかない。
タイで日本語教師を始めると、多くの人が最初に驚くのが「時間感覚」の違いです。
日本では、「時間を守ること」は社会人としての最低限のマナーです。授業開始の5分前には教室に入り、約束の時間には全員がそろっていることが当たり前という感覚で育ってきた人も多いと思います。
一方、タイでは、日本と比べると時間に対する感覚が少しおおらかです。もちろん時間を守ろうという意識はありますが、日本ほど厳密ではありません。学生が数分遅れてくることもありますし、学校の行事や会議が予定時刻より少し遅れて始まることも珍しくありません。
だからといって、日本と同じ感覚で厳しく注意し続けるのは考えものです。
「どうして時間を守れないの?」
「社会人として失格だよ。」
そんな言葉を繰り返してしまうと、学生との信頼関係だけでなく、同僚や上司であるタイ人教師との関係にも影響を与える可能性があります。
タイでは、「みんなが気持ちよく働けること」や「人間関係を保つこと」がとても大切にされています。
日本人教師が時間に厳しすぎると、「真面目な先生」というより、「融通が利かない先生」という印象を持たれてしまうこともあります。
もちろん、日本語教師として時間を守ることの大切さを教える必要はあります。
特に、日本企業で働くことを目指す学生には、「日本では時間厳守が信頼につながる」ということを伝えるのは重要な役割です。
ただ、その伝え方を工夫してみてください。
「日本では5分前に着くことが期待されるよ。」
「日本人と仕事をするときは、時間を守ることで相手から信頼されるよ。」
このように、日本の文化や価値観として説明すると、学生も納得しやすくなります。「あなたが悪い」と責めるのではなく、「日本ではこう考えられている」という形で伝えることがポイントです。
海外で教えるということは、日本の文化を伝えることでもあり、同時に相手の文化を理解することでもあります。
日本の時間感覚を押し付けるのではなく、タイの文化を尊重しながら、日本で求められる時間感覚を教える。
そのバランスを意識できる教師ほど、学生からも同僚からも信頼される存在になっていくと思います。
海外で教える面白さは、まさにその「文化の橋渡し」ができることではないでしょうか。
















