溺れる女 La noyée 

ゲンズブール Serge Gainsbourg

 

このシャンソンの歌詞を読むと、悪夢を見ているような気持ちになる。

 

川で漂流する恋人の「君」がいて、それを「僕」は岸辺を走りながら追いかける。「戻って来い」と叫びかけても、君は遠ざかるばかりだ。必死で走って、僕は距離を縮める。

そのうち、君は時々川面に沈んで視界から消える。君は、躊躇していて、僕が助けてくれることを待っている。

君のドレスがめくれ上がって、君の顔が見えなくなる。私には、恐怖と後悔しかない。

ついに君はぐったりして水際に浮かんでいる。哀れな溺死体を見て、まだ君が恋しい僕は、川に飛び込む。

 

実は、この川は、「想い出」という名の川で、やがては「忘却」という名の海に繋がっている。

僕の頭と心は、ズタズタに砕かれている。

想い出が終われば、二人は二度と結ばれることはない。

 

悪夢のようなこの歌で、ゲンズブールは、結局、以下のように言いたいのだと思う。

恋愛というのは、想い出になってしまうともう取り返しがつかない。やがては、忘却の彼方へと去って行くのだから。