Bon Voyage  ボンヴォアヤージュ

グロリア・ラッソ Gloria Lasso

 

アコーディオン演奏者の和里田えり子さんとお話していて、意見が一致したことがあった。

それは、1980年代にジャンジャンに観に行った美輪明宏さんについてだった。

 

美輪さんの「ボンヴォアヤージュ」(Bon Voyage)の4番は、原詞には無い。美輪さんが意図して付け足されたものだ。

 

その4番には、港で船を見送ることになり、紙テープを別れる男に手渡すが、途中で切れてしまうシーンがある。

えり子さんもジャンジャンでボンヴォアヤージュを聞いたことがあると言うので、私が「手の指の先に紙テープが見えなかった?」と尋ねると、「そう、本当にそこに紙テープがあるみたいだった。」とのことだった。やはり、同じ体験をしていたんだ!と感心することしきりだった。

 

おそらく、美輪さんのこの歌は、日本における演劇的シャンソンの最高峰に位置している一曲だと思われる。演技力の無い人がやったら、ともすれば三文芝居になりがちな題材だが、美輪さんがやるとフィクションとわかっていても妙にリアルで、見えない物まで見えてくる。

まさに演技力の為せる業だ。

 

実は、美輪さんから受け継いでこの「ボンヴォアヤージュ」を歌っている聖児セミョーノフ君が歌ったのを近くで具に観たことがある。やはり、私には紙テープの切れ端が彼の手に残っているのが見えた。

疑われる方は、彼のライヴで前もってリクエストされることをお勧めしたい。きっと見えるはずだ。