儚い愛だとしても 

Il me dit que je suis belle  

パトリシア・カース  Patricia Kaas  

 

この歌をシャンソンのお店で日本語で初めて聞いた時、歌謡曲だと思った。

日本語歌詞を書いたムッシュ矢田部には失礼な言い方かもしれないが、内容がすごく安っぽい気がした。

 

フランス語の原詞を読むと、かなり暗くて泥沼に陥っている女性が描かれている。しかも、パトリシア・カースのあの低いドスの効いた声で歌われている。

 

日本語歌詞では、「たとえ儚い愛だとしても私はあなたを信じたい」と乙女チックなのに対し、フランス語歌詞では、「あなたの言葉は嘘だった、人生は陰だけになった、だから光をもとめて夢をでっち上げるしかなくなった」と女性は闇の中にいる。

シャンソンには毒気が憑きものだが、このシャンソンは特に強い。暗い歌詞だけにせめてメロディを美しくして歌っているわけだ。

 

因みに、作詞・作曲した Sam Brewski はペンネームで、ジャン・ジャック・ゴールドマンが90年代に用いた別名であることを付け加えておきたい。