愛のために死す  Mourir d'aimer 

シャルル・アズナヴール Charles Aznavour 

 

シャルル・アズナヴールの「愛のために死す」は、実際にあった恋愛事件を題材にしている。32歳のシングルマザーの女性教師・ガブリエルが16歳の生徒・クリスチャンとの禁じられた恋愛の話です。両親の反対、学校やPTAの批判、裁判沙汰となり、2人は転校により隔離され、学校から連れ出そうとしたガブリエルは拘留されて、やがては精神を病んで自殺するまで追い詰められた。

自由恋愛の国・フランスで、どうして2人の恋愛が認められなかったのか? 謎だと思われる人もおられるに違いない。

 

その謎を解く鍵がある。

それは、成人年齢の壁だ。18歳になるまでは、成人ではなく、両親の庇護下にあると解釈されている。

だから、クリスチャンの両親がガブリエルとの恋愛に反対するのに対し、2人だけで旅行したり、家を出て2人で暮らすことは、クリスチャンが同意していたとしてもガブリエルによる誘拐になってしまう。これは、自由恋愛とは別の法律的枠組みだ。

18歳になってしまえば、どんな人とどんな恋愛をしても自由なのだが、それまでは一切が禁じられる。親が子供を保護する義務があるから。逆に、子供が何かをするには、親の了解が必要となる。これは、昔も今も変わらない。

だから、子供が18歳になるまでは、親はバカンスに子供を連れて行かなければならない。パリの家に子供を残してバカンスに出掛けた親は罰せられる。

 

エマニュエル・マクロン大統領が夫人のブリジットと知り合ったのは、16歳の時だった。高校の教師と生徒の関係というのは、クリスチャンとガブリエルと同じだ。エマニュエルの両親は、2人の恋愛を知り、引き離そうと彼をパリに転校させたが、ブリジットは追いかけて行った。この恋愛が悲劇に終わらなかったのは、法律を犯さなかったからだ。両親の反対を押し切って駆け落ちや同棲や旅行はしていない。マクロンが18歳になるまで二人は節度を守った。

時代が違うから、教師と生徒の恋愛が認められたのではない。法律は、クリスチャンとガブリエルの頃から変わってはいない。