リヨン駅 Gare de Lyon 

バルバラ Barbara

 

シャンソンのお店で梅雨時になると、決まって歌われるのがバルバラ(Barbara)のリヨン駅(Gare de Lyon)だ。歌詞の中で「パリは今日も雨が降っている」という箇所があるからだろう。

私は、パリに住んだことがあるので、リヨン駅からカプリやヴェネツィア行きの直行列車(夜行列車も含め)はないのを知っていて、長年この歌をバルバラが自らのパリ脱出願望を描いたフィクションだと主張し続けてきた。

ところが、2022年に刊行されたバルバラの伝記(David Bret Barbara... et moi DbBooks)に以下のように解説されていたのを見つけた。

 

バルバラは、歌の中にあるようにパリの物悲しさと悪天候から脱出するためにジェノバに行こうと思った。ロメオのような美男子を探しにイタリア旅行するのだと。ところが、いざリヨン駅の切符売り場に着いたら、ジェノバじゃないと思い、取り敢えずベネチアに行って、それからローマ、カプリあたりを目指そうと一人で列車に乗った。

そして、イタリアで Jack Palance という俳優と知り合い、恋仲になったと言う。

ここまでわかると、歌詞の中で(パリの)メトロのローマ駅で電話を掛けた相手は、女友達の可能性が高い。一緒にイタリアへ行こうと提案したものの、結局一人旅だったらしい。

メトロのローマ駅からリヨン駅にはタクシーで行く距離なので、その部分の歌詞に不自然さはない。

 

日本でも今では「おひとり様」が不思議ではなくなったが、このシャンソンがリリースされた1964年の時点で、女の一人旅をしていたバルバラのアヴァンギャルドさは、見逃せない。