あまい囁き パローレパローレ 

アラン・ドロンとダリダ

 
フランスっていう国は、時々世界に向けて手持ちのコンテンツの組み合わせで「どーだ、参ったか!」という出し物をやって来た。
例えば、ジャック・ドゥミ監督の「モン・パリ」(1973年)では、イタリアからマルチェロ・マストロヤンニを借りてきて、世界的女優のカトリーヌ・ドヌーヴを相手役にし、そして当時ヨーロッパ中で大人気だったミレイユ・マチューに映画の中で歌わせている。まさにゴールデントリオだと言える。
同様のジャンルに入る作品が今回の「あまい囁き」だ。
もともとイタリアのデュエット曲だったものをフランス語でカヴァーする際、美男子の代名詞が世界一似合うアラン・ドロンと美人歌手のダリダをカップリングした。当時この組み合わせに勝つものは世界に存在しなかったことだろう。だから、ユニゾンの妙だけでヒットは約束されていた。
 
もう一つ言えば、このシャンソンは、コンテンツとして素晴らしいだけではない。Michaële の書いたフランス語詞が素晴らしい。幻想的で美しい風景描写があったり、言葉遊びがあったりで、飽きさせない。しかも、イタリアっぽさを消しいかにもフランスの恋愛と思わせる編曲も優れている。
 
ただ、残念なことに最近のフランスは、世界的にあっと驚かせるコンテンツが減ってきた。「どうだ、参ったか!」と偉そうに言えた時代は遠くなってしまい、少し寂しい。