Parlez-moi d'amour 

聞かせてよ、愛の言葉を

 
この歌は、少しシャンソンを聴いたことがある方なら、ほぼ全員が知っておられることだろう。
1924年にジャン・ルノワールが友人のミスタンゲットと夜を過ごしていて、急にインスピレーションが沸いてきて、一気に書きあげたと言う。
なんとも優美なメロディで、言葉遣いも洒落ていて、クラシック歌手の多くも愛唱している。
石井好子も上野の音楽学校に通い始めた頃、友人の家でこのレコードをたまたま聞いて、シャンソンに憧れを持ったと言う。もっとも彼女の場合は、戦争のため途中で歌どころではなくなり、戦後はGHQ相手にジャズを歌い、アメリカに留学し、そしてそこからフランスに行くという遠回りをして、漸くシャンソンに辿り着いたのだが...
ところで、ジャンが書いた楽譜は、暫く書棚で眠っていたが、劇場で新人声楽歌手に歌わせたところ、リュシアン・ボワイエが私のレパートリーにさせてくれと申し出て来た。そして、出来上がったがレコードは、トントン拍子で売れ、フランスでグランプリを獲得し、その後37ヵ国でレコードが発売される世界的ヒットとなった。一時楽譜入れに埋もれていたこの歌は、誰もが知ることとなった。
聴いていると、自分の知らない1920年代のパリの夜がまるで体験したかのように想像で膨らんでくるから不思議だ。