シャンソンのお店に初めて来た人、特に50代・40代の人たちは、「シャンソンは暗い歌ばかりなんですか?」と感想を述べることが多い。

フランスの歌番組を80年代くらいからずっと追いかけているが、暗いシャンソンばかりではないので、これは日本語シャンソンに特有のものだと私は思っている。

どうしてそうなったのか?

 

 

これは、日本語シャンソンを形作って来られた方々の世代の問題だと思う。

石井好子が大正11年生まれ、越路吹雪が大正13年、それに続く永田文夫が昭和2年、薩摩忠が昭和6年、古賀力が昭和9年など昭和一桁世代である。彼らの好みで本場のシャンソンがセレクトされ、日本に持ち込まれたわけで、それらがこれまで歌い継がれて来た。

 

日本の歌謡曲を思い出していただくとわかるが、明るくポップになったのは、団塊の世代の作家たち、はっぴーえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂)あたりが参入してからで、さらに私たちの世代の作家では松任谷由実や桑田佳祐、秋元康、小室哲哉、竹内まりや、尾崎亜美たちでもちろん暗い曲も無くはないが、明るい曲調も数多い。現在の50代・40代は彼らの作った歌をずっと聴いて来た。

 

シャンソンも歌謡曲と同じではないだろうか?

だから、戦中派が選んだシャンソンは、今の60歳未満に暗く聞こえるのは仕方ないと思われる。

もちろん、例外はある。歌謡曲で言えば、団塊世代の前の阿久悠や安井かずみ、平尾昌晃や鈴木邦彦などはポップな歌を作っているし、シャンソンでは芦野宏が明るく楽しい歌を多く紹介した。彼らは、ジェネレーションを超えている。

ただ、全体としては、暗い方に押されてしまっているわけである。