クレイジー・キャッツがレコードを出している歌は、コミックソングが多く、それを聞いて泣く人は少ない。

ところが、あの佐藤栄作(当時は総理)が涙したというから不思議だ。

 

 

渡辺晋(渡辺プロダクション社長)は、政財界との関係を大切にした人で、毎年夏には軽井沢でゴルフコンペを行っていた。夜には余興でナベプロ所属のタレントも歌を唄ったりして盛り上げた。

或る年のこと、クレイジー・キャッツが「おさななじみ」の替え歌で、「今日もお酒が飲めるのは、佐藤総理のお陰です。佐藤総理、ありがとう。今日はほんとにありがとう。」と持ち上げた。すると、佐藤栄作は相好を崩して、そして涙を流し始めたと言うのだ。

 

長期政権でとかく政界のドンと呼ばれる強面の人で、人から疎まれることが多かったからだろうか、思いもかけなかったクレイジー・キャッツのヨイショについ泣いてしまったというわけだ。

そう言えば、国民から栄ちゃんと呼ばれたいと言っていた話は有名で、「ありがとう」などと言われた経験が少なかったのかもしれない。意外と純情な面があるのに驚いた。