名古屋に伊藤姉妹という歌の好きな双子がいた。ラジオから流れてくる、当時「ジャズ」と呼んでいたアメリカ、フランス、イタリアのポップスを聴くのが好きだった。
実家に下宿していたクラブ・ホステスの紹介で、商業高校の放課後に名古屋のナイトクラブ「ヘルナンド」で歌のレッスンを受けることになった。
そして、支配人が「お客の前で歌った方がうまくなるから」と言われ、ステージに出るようになる。
それが始まりだった。
昭和33年、名古屋に公演で来ていたシックス・ジョーズのピアニスト・宮川泰がドラマ―のジミー竹内に連れられて、クラブ「ヘルナンド」へ行って、偶然、伊藤姉妹の歌を聞くことになった。
そして、宿に帰って、バンドリーダーの渡辺晋に「歌のうまい歌手を見つけました!」と報告したのである。
伊藤姉妹が後のザ・ピーナッツとなったのは、宮川泰が見つけたからだった。