最初のブリュッセル修業からパリに逃げ帰ったバルバラは、もう一度ブリュッセルに挑戦した。
そこで、クロード・スリュイ(Claude Sluys)とその仲間たちと知り合い、イクセル(ブリュッセル南郊の町)の揚げ物屋の奥で始めた白い馬(Le Cheval blanc)という小さなキャバレーからキャリアを始めることになった。
その店には、狭いダンスフロアと小さな舞台があって、楽屋は無かったが豪華な布の幕があった。
その店を拠点に、バルバラは漸く落ち着いて歌手活動を始めることができ、徐々にレパートリーを増やして行った。
オートクチュールのデザインを学んでいる友達が黒い小さなドレスをバルバラに作ってくれた。バルバラの希望で飾りはついていなかったが、斜めにサテンの縁取りがあるシンプルな黒いドレスだった。
白い馬と黒いドレス、これがバルバラの始まりだった。
出典: Marie Chaix "Barbara" libretto