まだアイドル歌手というコンセプトが確立していなかった1960年代では、少女歌手は年齢以上に大人っぽい化粧をしてテレビの歌謡番組に出ていた。

伊東ゆかり、中尾ミエ、園まりの3人娘が洋楽ポップスのカヴァーを歌っていた時は、みんな10代だったし、いしだあゆみが「ブルーライト・ヨコハマ」を歌った時、まだ20歳になったばかりだった。ずいぶん最初から大人っぽくしていたものだ。

だから、彼女らは少女から大人へのステップが障害になることは無かった。せいぜい、歌の内容を大人の恋に、服装もミニスカートからロングドレスに変えるだけで十分だった。

ところが、例外があった。

 

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山本リンダだ。

彼女は、15歳にして「こまっちゃうナ」でデビューしたのだが、既に大人の肢体をしていて、顔も化粧がいらないくらい派手で、歌詞と声だけが少女というアンバランスだった。最初は物珍しさで少し人気が出たが、長続きはしなかった。

だから21歳の時、「どうにもとまらない」でカムバックした時、「大人の女性になって戻って来た」と言われたが、正確な表現は「漸く彼女の実在に一致する歌を歌わせてもらった」ということだった。

 

 

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