西條八十を作詞家だと思っておられる方も少なくないだろうが、実はフランス文学者(早稲田大学仏文科教授)であり、詩人でもある。

だから、例えば、「パリの屋根の下」の訳詞などがもっとも得意とする分野であり、普通の作詞でも所謂文芸調になるのは自然だっと思う。

 

 

ところが、戦後、歌謡曲が全盛となると、当然その歌詞を書くよう依頼が舞い込んで来た。

歌謡浪曲である「王将」は、伝説の将棋士・坂田三吉を描いた作品だが、凡そ浪曲というものに縁のない西條八十がよく歌詞を作れたものだと感心する。

さぞや書くのに苦しんだのではないかと想像する。

「明日は東京に出て行くからは」なんて、大阪人の気概をよく表現できたものだと思う。