アイドルの成長をファンが応援しながら見守るというのは、モーニング娘やAKB48から始まったわけではない。

それは、キャンディーズのアルバム「年下の男の子」(1975年4月)に遡る。

渡辺音楽出版の松崎澄夫がファン心理をいち早く感じ取って、戦略として始めたのだった。

キャンディーズは、初めてセンターを伊藤蘭にしたシングル「年下の男の子」でブレイクしたが、その後に出た同じ題名のアルバムに隠し玉を忍ばせていた。

 

 

それは、「春一番」だった。

この曲をキャンディーズはコンサートで必ず歌い、ファンの認知度を10カ月かけて引き上げて行った。

そして、翌年の3月、満を持してセルフ・カヴァーのシングル「春一番」を発売した。

 

ファンにしてみれば、自分たちがアルバムを買って聴き、コンサートに行って聴いた、一般の人が知らない曲がシングルになるというのは、とても喜ばしいことだった。応援の甲斐があったということになる。

ファンでない人たちに対する細やかな優越感、そしてアーティストとファンの一体感、こうした心情を事前に予測して企画したわけで、それが見事に当たり、「春一番」は大ヒットとなった。