1985年6月24日、松田聖子と神田正輝の「聖輝の結婚」がテレビ放送された。

その2日後の6月26日、夜のヒットスタジオでは、郷ひろみがニューヨークから衛星生中継で出演した。

1曲目の「ハリウッドスキャンダル」を歌った後で、司会の芳村真理が日本のスタジオから、「聖子ちゃん、綺麗だったわよ。」と声を掛けた。

郷は、「そう、良かった。」と言うのが精一杯だった。

 

 

2曲目は、「哀愁のカサブランカ」だった。

3年前のヒット曲だったが、まるでこの日のために作られた歌のようだった。

 

「むすばれると信じてた」とか、「もう二度と あんなに誰かを愛せない。」という歌詞が視聴者の心に刺さった。

そして、ニューヨークで歌ったいる郷ひろみの映像に重ねて、かつて同番組に出演していた松田聖子が映る、二人が仲良さそうにしている様子も映る。

 

おとなの恋をしたときいた

あたらしい名前になったと聞いたよ

でも僕の心のスクリーンの中

君がはしゃぐ 君が泣いている

 

この選曲そして演出は、郷ひろみの承諾無しではできない。自分の個人的な悲しみまでネタにしてしまうところが、彼のショーマンシップというか、芸能人になるために生まれて来たというか、凄いなと思ってしまう。

聖子の結婚式で日本中が沸いている最中、とても東京にはいられないと渡米した郷、そしてそれを衛生中継で追いかけるフジテレビ。まさに、テレビ全盛の時代だった。

面白くなければテレビじゃない!フジテレビは元気だった。