バルバラが子供の頃に父親から性的虐待を受けていたことは、よく知られている。

しかし、彼女が生きた時代には、性的虐待(abus sexuel)という言葉遣いはしなかった。近親相姦(inceste)という言葉はあったが、あまりにもストレートでどぎつくて使い難い。

 

 

彼女が用いたのは、"l'humiliation faite à l'enfance"という言葉だった。直訳すると、「子供時代に為された恥辱」となる。

かなり後年になるまで、彼女はその「恥辱」を語ることはなかった。心に受けた傷はかなり深かった。その傷と共存することはできても、たぶん亡くなるまで癒えることはなかったのではないかと想像する。