僕はピンクレディーと同い年なので、デビュー当時からその歌の虚構性にはついて行けなかった。渚のシンドバッドやピンクのサウスポーに感情移入することはできない。そういうことだ。彼女らは作り物の世界を歌わされている感じがして、しかも途中からは明らかに子供相手の歌詞になってきて、まったく興味がわかなかった。ミイとケイの二人を同世代のセクシーな女性というよりも、むしろ色気のない操り人形のように感じていた。

ところが、松田聖子は違った。

 

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松田聖子もアイドルという虚構を演じていたのだが、その嘘臭さを愉しんでいるように見えた。

まるで、「あなたたちの思うアイドルというのは、こういう感じなんでしょ?お望み通り演じてあげるわよ。」と挑発されているような感じがあった。

本気になればもっと上手なはずなのに、わざと下手に(アイドル風に)歌っているんじゃないかと思われるフシもあった。服装や振付も、天地真理や麻丘めぐみを彷彿させるような古臭い懐かしさがあった。

山口百恵がそれまでのアイドルを否定して出て来たように、松田聖子も山口百恵のアンチテーゼとして登場し、それが僕たちの心を掴んだのだと思う。