1975年2月、僕たち世代はテレビ画面を衝撃を持って見つめていた。キャンディーズが5曲目の「年下の男の子」からセンターをランちゃん(伊藤蘭)に交代したからだった。
「センターって変るもんなんだ!」と初めて知った。
もちろん、ロックバンドでボーカルが交代する例は知っていた。ローリングストーンズもミックジャガーがフロントマンになった。でもそれは、ブライアン・ジョーンズが脱退・死亡したからだった。
スーちゃん(田中好子)は、隣に移動して歌い続けているのだから。
スーちゃんについて当時の高校生(僕は当時2年生)は、目がぱっちりして頬がぽっちゃりした天地真理のような顔立ちが若干古臭い感じがしていた。山口百恵がブレイクして以来、木之内みどりや原田美枝子、少し年上だが小林麻美などアイドルは狐顔が主流になりつつあった。
そこで、ランちゃんのセンターである。
歌う位置が変わっただけなのに、急に眼が離せなくなってしまうのだった。完全にプロデューサーの酒井正利の思う壺だった。
AKBの仕掛け人である秋元康は、僕たちと同世代だ。彼がセンター交代に拘ったのは、頭の片隅にキャンディーズがあるに違いない。