太平洋戦争後に流行った映画に「青い山脈」がある。あの映画には石坂洋次郎の原作があって、その山脈とは、「石坂が幼少期から目にしていた白神山地だ」という青森説と「13年も教員を務めた横手の奥羽山脈だ」という秋田説がある。

ところが、主題歌の「青い山脈」を作った服部良一は、別の山脈を見て音楽が閃いたと言う。

 

 

当時、服部は関西にいて、大阪・梅田劇場での「笠置シズ子ショー」と京都・大映撮影所の映画「春爛漫狸祭」を掛け持ちしていた。梅田から省線(今のJR)に乗って京都へ移動する車中で、日本晴れのはるか彼方にくっきりと稜線を描く六甲山脈が車窓越しに見えた。それで、「青い山脈」の曲想が浮かんだ。

だから、こちらの山脈は六甲なのだった。