1970年阿久悠は、70年安保闘争に挫折した青年が明日はどっちだと迷っていた頃の心情を歌詞にして「ひとりの悲しみ」という歌をズー・ニー・ヴーのために作った。作曲は、筒美京平だった。

ところがこの歌は売れず、音楽出版社日音の恒川光昭から「『ひとりの悲しみ』は捨て難いし、新しく歌える歌手もいる。ついては、もう少し明日を感じさせる詞に書き直てくれないか。」と依頼が来た。

 

 

そこで、男女の別れの歌に書き換えて、サビの部分を「ふたりでドアをしめて ふたりで名前消して...」として、尾崎紀世彦が歌ったら、大ヒットし1971年のレコード大賞曲となった。

安保闘争後のこの年は、失望した男のひとりの悲しみよりも前向きな男女の別れの方を大衆は支持したのだった。

 

(出典:阿久悠「昭和と歌謡曲と日本人」)