フランスの大衆歌謡(シャンソン)の世界では、1960年代くらいからシンガーソングライターが出現した。もちろんその前からシャルル・トレネやジョルジュ・ブラッサンスはいたが、大半のシャンソンは、作詞家・作曲家・編曲家・歌手の分業制で成り立っていた。

 

 

シンガーソングライターは、自分の言葉で自分の体験や日頃の想いなどをもとに等身大の人間を描くことができて、それがオーディエンスの共感を得る点では優れているのだが、弱点もあった。

それは、一人ですべてすることで自己完結的な作品になりがちで、虚構性の高い非日常的なことを描けないというウィークポイントがあった。また、私小説的な作品ばかり書いていると、ネタが尽きるリスクが高いという欠点もあった。

そうした点を克服できたのが、ジャック・ブレルやバルバラだ。彼らは、イマジネーションの豊富さと多彩なヴォキャブラリーによって、類まれなるストーリーを展開し、観客を飽きさせなかった。

彼らは、プロのベテラン作詞家を唸らせる歌詞を書いている。