セルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)は、ヘビースモーカーである理由を記者に訊かれ、「un suicide lente(ゆっくりした自殺行為)なんだ。」と答えていました。

「ゆっくりした」というのは、「時間のかかる」という意味です。つまり、煙草を吸うという体に悪いことを毎日頻繁にしていると、何もしないよりも早く死ねると言うわけです。

 

 

この un suicide lente という言葉、どこかで読んだことがあるとずっと思っていました。面白い表現なので、頭の片隅にひっかかっていたのです。

 

それが昨日、解き明かされました。

三島由紀夫が高く評価していた Radiguet(ラディゲ)の "Le Bal du comte d'Orgel"(ドルジェ伯の舞踏会)を読み返していて、見つけました。

 

登場人物のポールは、自分のごく自然な心の動きを警戒しすぎたため、心が委縮してしまいます。これは、ゆっくりした自殺行為と言えるという箇所があったのです。

 

ゲンズブールがラディゲに惹かれるというのは、なんとなくわかる気がします。(この話は、いつか講演会で話すか note に書きたいと思います。)