イヴ・モンタンの歌う「毛皮のマリー」に着想して寺山修司は、丸山(美輪)明宏のために戯曲「毛皮のマリー」を書きました。内容は、シャンソンとはまったく違います。

実は、寺山はここでジャン・コクトーへのオマージュをやっているのです。

どういうことかと言うと...

 

 

コクトーが社交界を離れ、アーティストたち(ピカソ、エリック・サティ、ココ・シャネル、エディット・ピアフなど)と交流を深めて行った話は、昨日書きました。

 

「毛皮のマリー」では、美術を横尾忠則、衣装をコシノジュンコ、主演が丸山(美輪)明宏となっていて、ピカソ、ココ・シャネル、エディット・ピアフの日本ヴァージョンであるとも言えます。

しかも、以前から仲の良かった横尾は別として、残りの二人には寺山自らが声を掛けていることから、完全にやりたくて組んだスタッフ構成だったと思われます。

 

ただし、このアーティストたちの組み合わせは、大揉めに揉める結果となりました。

横尾の作ったセットは大きすぎて、アートシアター新宿文化に運び込むことができず、半分に切ったらと言われて、横尾はそれに激怒して美術から降板したのです。丸山が機転を利かして、自分のマンションから家具を運ぶことでなんとか収まった。(だから、美術は寺山修司となっています。)

衣装についても、丸山とコシノの間で揉めました。コシノは、毛皮を着るのは平凡過ぎるのではないかと考え、そこで紙のような不織布でできた衣装を着るように提案しました。

この不織布はブラックライトが当たると暗闇で幻想的に光る不思議な素材。ディスコで遊んでいる時に気が付き、いつか衣装に使ってみたいと思っていたのだそうです。ところが丸山がどうしても納得しません。結局、丸山が最後まで折れず、自前の毛皮を着ることになりました。

 

出典:日経新聞 私の履歴書 コシノジュンコ(14)毛皮のマリー 2020年7月14日

 

パリジェンヌのエクソダス願望|十川ジャンマリ (note.com)