ジェーン・バーキン(Jane Birkin)についてブログを書いています。
今回は、セルジュ・ゲンズブールが彼女のために書いたシャンソン "l'aquoiboniste" の日本語訳が間違いだらけだという点を指摘したいと思います。
そもそも、日本語タイトルの「無造作紳士」というのが何のことかわからない!
aquoiboniste というのは、ゲンズブールの造語で、"À quoi bon ?"(何がいいの?)ばかり言っている人のことです。
それで、次に歌詞の方で、よく間違えられている箇所を説明します。
Un faiseur de plaisantristes
この plaisantristes(ジョークを作ったり演じたりする人、ジョーカー) を plaisantries(楽しいこと)と勘違いして、「楽しいことをする人」と訳しているケースが非常に多いです。
フランス語では、例えば、「彼は、若い人ぶっている。」というのは、
Il fait le jeune homme.
です。
この faire を名詞にすると、
un faiseur de jeune homme
(若い人ぶっている人)
だから、Un faiseur de plaisantristes は、
(ジョーカーのふりをしている人)となります。
この歌の主人公は、「何がいいの?」ばかり言っている人なので、明らかに「楽しいことをする人」ではなく、「ジョーカーのふりをしている人」、つまり、ジョークを言う人のふりをしているだけで楽しませてくれる人ではありません。
この歌詞全体をよく読んで理解して訳さないといけません。それから、この歌を作った時のゲンズブールとジェーン・バーキンのラブラブな関係も背景として理解しなければなりません。(私は、この歌をゲンズブールからジェーンへのラブソングだと理解しています。)それから、細かいですが、ジョーカーとピエロの違いも理解していなければなりません。
辞書を引いて一生懸命訳されているのはわかるのですが、シャンソンを訳すためには、フランス文化、そして作詞者の人生、作られた時の社会情勢など幅広く理解する必要があると思います。
それにしても、「無造作紳士」って何なのでしょう?