日本語にせよフランス語にせよ、シャンソンを歌いたい人は世の中に大勢いらっしゃると思います。

あれだけ、いろんなお店で歌会が行われ、コンクールにも応募が殺到しているのですから。

ただし、それを聴きたい人がどのくらいいるか?と言えば、かなり疑問があります。

 

 

この、歌いたいと聴きたいの需給ギャップは、10対1か、あるいはもっと激しいかもしれません。

 

かく言う私もフランス語で少し歌おうとして、歌会なるものに行ったことがありますが、ピアニストの伴奏に合わせてフランス語で歌う練習をしていると、それに被せて歌ってくるご老人がいて、「人が歌っている時に歌わないでください。」と面と向かって注意したことがあります。自分の知っているフランス語の歌詞だと、つい声に出して歌いたくなるのは人情でしょうが、マナー違反も甚だしいです。

 

このエピソードでも明らかなように、自分が歌いたいというのが先に立って、他人が歌っているのを聴くことは二の次なのです。

 

シャンソンを歌いたいが最初で、少し歌えるようになると、人前で歌いたい気持ちが強くなります。それで、シャンソンのお店で歌う機会を探すことになります。

ちゃんと先生について習っている人なら、あなたはまだ早いと先生が止めるのですが、そうでない人は観客ノルマを引き受けてお店で歌ってしまいます。

そんなアマチュアの完成されていない歌なんて、果たして聴きたい人がいるのでしょうか?

昔馴染みだから聴きに行くというご友人、おばあちゃんが出演するからと出かけていくお孫さん、そういう学芸会やピアノの発表会的なことはアリだと思います。でも、そういう人たちであっても、機会が度重なると、どうなるのでしょう?

 

極端な言い方をすれば、下手だけど歌いたいと下手な歌は聴きたくないという需給ギャップは、永遠に埋まらない深い溝だと思います。

これがシャンソン界とフランス語で歌う人たちのグループが抱えている構造的な問題点だと私は思っています。

一部のお店がされているようなオーディションを全ての店に導入すべきだと思います。審査員をせよと呼ばれれば、いつでも馳せ参じます。