以前にも書きましたが、シャンソンブームだった昭和30年代、蘆原英了のレコード・コンサートは、毎週、銀座のヤマハホールで開催され500人満席、本場のシャンソンの最新レコードをかけてその歌詞・曲の解説をするという内容でした。

 

 

その頃のシャンソン歌手は、本場パリのシャンソンを日本のステージで再現する意味がありました。一般の人々にとって本場のシャンソンを聴くことが大変だったからです。日本人歌手が模倣して歌うシャンソンに対するニーズはそこに生まれました。最初は、フランス語で歌っていましたが、やがて日本語歌詞で聴きたいという観客からの要望が高まって行きました。

 

ところが、今では、環境がガラッと変わっています。

音楽配信サービスをサブスクリプション(月払い)で契約すれば、CDを買わなくても好きな曲を好きなだけ聴くことができます。音質も良いです。つまり、本場のシャンソンをたとえ新譜であっても、手軽に好きなだけ何度でも聴けるわけで、昭和30年代のようにホールのレコードコンサートに出掛けていかなくても良いし、昭和40年代以降のようにレコードにお金を掛ける必要も、友達から借りてくることも必要なくなりました。

 

ライヴの方はどうでしょう?

本場のシャンソンが、スマホさえ持っていれば、電車の中や散歩中やベッドの中でも聴けるわけで、ごく身近なものになっているのに、わざわざ繁華街まで出掛けて行って、日本人が再現する日本語のシャンソンを聴く必要が果たしてあるのか?という命題に行き当たります。

歌が上手い、演奏が素晴らしい、表現力が豊かだ、お人柄に惹かれるなどの良い点を積み重ねていかないと、遠くまで高いお金を払って聴きに行かないのではないか?と思ってしまいます。

そういう意味で、昔よりも観客集めは、相当ハードルが高くなっていると思われます。現代のシャンソン歌手は、大変厳しい環境下にあることは事実です。