イヴ・モンタン・ヴァージョンの「バラ色の人生」の歌詞については、以前にも書いたことがありますが、今回は、ピアフのヴァージョンから変えた部分、残した部分について解説します。
まずは、聴いてみてください。
歌い出しの部分で、ピアフ・ヴァージョンの最初の4行が省略されています。
Des yeux qui font baisser les miens
あなたの眼差しに目を伏せる
Un rire qui se perd sur sa bouche
口元に微笑みが消えて
Voilà le portrait sans retouches
これが飾り気のないあなたの素顔
De l'homme auquel j'appartiens
あたしが心身を捧げている男(ひと)の
この4行目を女性から男性に書き換えるとすると...
De la femme à laquel j'appartiens
あたしが心身を捧げている女性(ひと)の
となります。
このフレーズって、死んでも歌いたくなかったのだと思います。
イヴ・モンタンは、実際にピアフの弟子であり、恋愛相手であったわけですから、完全にピアフが主、モンタンが従の関係にあったわけです。だから、心身を捧げてしまっていたのは事実なのですが、男としてそのことを歌にするというのは、あからさま過ぎるし、また少し屈辱的でもあります。
そういう訳で、この4行が省略されたは、よく理解できます。
次に、歌詞は、女性形と男性形が全て入れ替わっているのですが、Il が Elle にならずに、そのままの箇所があります。
Il est entré dans mon cœur
私の心に入り込む
une part de bonheur
幸せの一部分が
dont je connais la cause
その理由を私は知っている
この一行目の Il が Elle にならないのは、文法的に言うと、無人称の il であるからです。まずは、il と言っておいて、その後にそれが指す言葉 une part de bonheur が来ます。
つまり、
Une part de bonheur est entrée dans mon cœur.
と言い換えることができます。(強調文の一種です。)
Une part が女性形なのに、なんで Elle にならないのかと言うと、無人称の il に女性形が無いからです。
なんだか、フランス語講座になってしまいましたので、この辺りで終わりにします。
ともかく、男性の方は、ぜひ、このイヴ・モンタン・ヴァージョンで歌っていただきたいと思います。