エディット・ピアフ(Édith Piaf)は、稀代のシャントゥーズなので、ライバルなんていなかったんじゃないかと思ってしまいがちですが、彼女自身は、ライバルを意識していました。


 

自叙伝の前書きによれば...

ピアフが危険なライバルだと見做していたのは、Damia, Fréhel, Marie Dubas の3人だそうです。彼女からすれば、少し上の世代のシャントゥーズばかりです。しかも、ピアフがデビューした時には、彼女らは既に栄光の頂点にいました。

この3人については、ピアフはライバル視とともに尊敬の念も持っていたそうです。

つまり、ピアフの場合、自らの目標が高かったので、既にスターとして輝いていた歌手たちをライバル視できたわけです。

 

ピアフは、Marie Dubas との会話を以下のように回想しています。

 

《Au cours de la conversation, elle s'aperçut que je lui disais "vous". Elle m'en fit la remarque.

- Tu ne me tutoies pas, Édith ?

- Non, Marie, lui répondit-je. Je vous admire trop. J'aurais l'impression de gâcher quelque chose...》

会話の途中で、彼女は、私が vous で話しているのに気付き、私に注意しまた。

- 私と tu で話さないの、エディット?

- いいえ、マリー (と私は答えました。)私は貴女をとても敬服しています。(もし tu で話すと)何かを壊してしまうような印象を持ってしまうので。

 

フランス語では、自分が敬う人や初対面の人には vous を用いて話し、友達などの親しい人には tu を用いて話します。Marie Dubas とは既に親しかったにもかかわらず、vous で会話するというのは、リスペクトしていることと、ライバルとして少し距離を置いて話すということの二重の意味があったのだと思います。

 

 

出典: Édith Piaf  AU BAL DE LA CHANCE  l'Archipel

 

 

 

 

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