エディット・ピアフは、クリスチャン・ディオールやピエール・バルマンでよくオートクチュールを注文したのだそうです。でも、買うだけで、ステージでは着なかったそうです。ブランドのメゾンを出た瞬間に魔法が消えたようにその服が良く思えなくなったと自叙伝の中で述懐しています。

越路吹雪は、どんなブランドのオートクチュールを着ていたのでしょうか?

 

 

彼女が着ていたのは、イヴ・サンローランとニナリッチだそうです。

ピアフは身長が147cmしかなかったのに対し、170cm近くある、すらりとした体型の越路は、オートクチュールが良く似合いました。

今でも、日生劇場でリサイタルをご覧になった先輩方から、どれだけそのオートクチュールの着こなしが良かったか、という話を伺うことがあります。

 

パリのブティック街で「マダム内藤」として有名だったとは言え、スケジュールが忙しい越路がそんなに何度もパリに行くことはできなかったはずです。どうやってオートクチュールを注文していたのでしょうか?

 

 

実は、イヴ・サンローランとニナリッチには、パリの本店が承認する仕立て人が東京にいたのだそうです。それで東京にいながらオートクチュールを注文できたわけです。

当時の日本人女性としては大柄な彼女、しかも華やかなシャンソンのステージに立つ人なので、両ブランドのパリ本部にとってはPR効果も含めて最高の顧客だったに違いありません。

 

話はそれますが、美空ひばりもピアフと同じ身長(147cm)だったのだそうです。でも、あの東京ドームでの「不死鳥伝説」では、そんな身長の低さは感させませんでした。ハナエモリのデザインだそうですが、やはりステージに出る歌手にとって衣装というのは大切な要素だとわかります。

ピアフもディオールかバルマンを着てオランピア劇場に出ていれば、私たちのイメージも変わったかも知れません。