昨日の参議院選挙、元歌手・女優で当選した人がいました。フランスでは、そんなことはあり得ないと思いがちですが、1988年の大統領選挙に出馬するかどうか真剣に考えたシャンソン歌手・俳優がいました。

 

 
 それは、イヴ・モンタン(Yves Montand)です。
 1981年に俳優出身のロナルド・レーガンがアメリカの大統領になったことで、フランスで当時もっとも人気の高かった俳優・歌手のイヴ・モンタンが注目されることになりました。モンタン夫人だったシモン・シニョレ(Simone Signoret)の娘・カトリーヌ・アレグレ(Catherine Allégret)によれば、名前は出せないが何名かの政治家からイヴは出馬を打診されていたそうです。もちろん、彼の思想的背景から言って、左翼の候補ということになります。
 当時は、社会党のミッテランが大統領でしたが、人気が今一つで、2期目になる1988年の選挙に再出馬するか不透明な状況でした。イヴにチャンスが訪れそうな気配が実際にありました。モンタン・ファミリーの中心メンバーだったベルナール・クシュナー(Bernard Kouchner)によると、イヴは、「自分にフランスはついて来る」と信じていたのだそうです。
 では、どうして、大統領選挙に立候補しなかったのでしょうか?

 

 

 それは、1985年に奥さんのシモン・シニョレ(Simone Signoret)が亡くなったからでした。

 悲嘆の中で、彼は、以下のように公式発言しました。

 

"Ce n'est pas mon ambition d'être Président (…) Je n'ai pas la connaissance suffisante"

 大統領になることは、私の目標ではない(中略)私は、十分な知識を持っていない。
 
 政治にではなく、シャンソンや映画の世界に生きたイヴ・モンタン。そして、奥さんを心から愛していたイヴ。それは、素敵な人生だったと思います。

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