ジャック・ブレル(Jacques Brel)の Les Bourgeois(直訳すると、ブルジョワたち)は、独白調で、演劇(テアトル)のようなシャンソンです。

 

 

 まずは、歌をお聴きください。ルフラン(リフレイン)の最後の言葉がカットされ、尻切れトンボのようになっているのに気付かれると思います。

 

 

この歌の概要は、以下のとおりです。
青春時代、僕と友達2人は、ブルジョワたちを見かけたら、お尻を見せながら、彼らを馬鹿にした歌を大声で唄っていました。
ところが、いざ自分たちが先生と呼ばれるようになったら、若いろくでもない連中から、逆に自分達を馬鹿にする歌を唄われてしまうのです。
ブルジョワを馬鹿にしていた頃の理想に燃えた青春時代こそ素晴らしかったわけで、自分がブルジョワになってしまっては、元も子もないという、自戒を込めたシャンソンです。
この歌を作った時(1962年)、ブレルは33歳で、既に裕福になり始めていました。
当時のラジオ番組で、彼は、こう言っています。
 
Les bourgeois, c'est une forme de matérialisme. C'est une forme de... tout ce qui tue le rêve. C'est la sécurité. Il faut penser à plus tard. C'est ce qui fait les vieux.
ブルジョワは、物質主義の一つの形態です。その形態は、夢を潰してしまいます。それは、安定です。(安定というのは)もっと後で考えることで、それは人を老けさせます。
 
 ところで、このシャンソンのルフラン(リフレイン)の最後の部分で、ça devient... と言葉が途切れています。これは、放送禁止になるのを避けるためにカットされたのでした。
 
Les bourgeois c'est comm' les cochons
ブルジョワは、まるで豚のようだ
Plus ça devient vieux, plus ça devient bête,
それは歳を取り、そして馬鹿になる
Les bourgeois c'est comme les cochons
ブルジョワは、まるで豚のようだ
Plus ça devient vieux plus ça devient...

それは歳を取り、そして...になる

 

このカットされた最後の言葉は、con (俗語で大馬鹿者のこと)です。女性の性器を表す言葉なので、カットされました。