2019年8月16日付 Facebook の投稿に対し、今になってコメントが続けてありました。「Jazz の人と話して驚いた。Seule ce soir をよく演奏するそうだ。この古い曲は、シャンソン界では友部裕子さんが歌われるくらいで、ほとんど誰も知らない。」

 

 

 そのコメントは、「私も歌っています」と、「私は歌っていないですが、(歌っている方は)結構いらっしゃいます。」というものでした。どうして、3年近く前の投稿にコメントがついたのか不明ですが...  きっと、私の「ほとんど誰も知らない」という理解が間違っていたからなのでしょう。

 

 

 せっかくなので、知らない方のために曲の紹介をさせていただきます。

 (Je suis) seule ce soir(下注)という題名のこのシャンソンは、Léo Marjane(レオ・マルジャヌ) が歌ったもので、作詞が Rose Noël と Jean Casanova、作曲が Paul Durand の1941年の作品です。

 歌の内容は、愛する人が不在で、私は苦しみの中で一人家にいる、というもので、ちょうどこのシャンソンが発売された頃は、フランスはナチスドイツによる占領下にあったため、夫がドイツの捕虜となっている女性と、それらの女性を知る人たちを中心に、大ヒットとなりました。

 ナチス占領下のヴィシー傀儡政権の時代ですので、露骨な反戦歌は発禁となります。そういう時代でした。この歌の場合は、今は離れ離れになっている愛する人を想い、その帰りを待つ女性の心情を表現していますが、戦争や戦場、兵士などの言葉は出て来ません。でも、歌詞の行間に戦争によって一時的、あるいは最終的に夫を奪われた女性の悲しみが滲み出ています。そこが当時のフランス人の心の深いところに響いたのだと思います。

 

 もう一つ、付け加えると、この曲がジャズの人に採り上げられることが多いのは、ジャンゴ・ラインハルト (Django Reinhardt)が自らのレパートリーにしていたことが影響していると思われます。Youtube の最近のアップで、ジャンゴ・スタイルの演奏がありましたので、ご紹介します。

 

 

 

(注)最初のレコーディングの時の題名は、Seule ce soir でしたが、その後のカヴァーでは、Je suis seule ce soir とタイトルを付けられているケースもあり、どちらも正しいということで、Je suis の部分を括弧書きとさせていただきました。