年末で時間があったので、2016年に劇場公開された「ダリダ~あまい囁き」を久しぶりに観ました。今日は、その話を少し。


 

ダリダの最初の結婚は、1961年、マネージャーのリュシアン・モリス(Lucien Morisse)でした。彼は、仕事上かけがえのない男性(ひと)でしたが、愛の関係に無いことに気付き、結婚中にもかかわらず、俳優で画家のジャン・ソヴィエスキ(Jean Sovieski)と恋愛に走ります。

 

結婚している女性が旦那さん以外の男と自由恋愛することは、当時のフランスではまだまだ賛否の分かれる事象でした。結果として、ダリダのファンは彼女のもとを去らなかったのですが、映画の中では、オランピア劇場でのコンサートの前に贈られて来た花に以下のように書いてありました。

 

À la chanson défunte, vive Édith Piaf

葬られたシャンソンへ エディット・ピアフ万歳

 

このメッセージは、「あなたのシャンソンはもう死んでしまった。所詮、あなたはエディット・ピアフにはなれなかった。」という意味です。当時のフランス人がダリダをピアフと並べて考え始めていたことがよくわかります。(ピアフも妻子あるマルセル・セルダンとの恋愛は世間の批判を浴びたのですが、最終的にファンは彼女のもとを離れませんでした。)

 

話は、ジャン・ソヴィエスキに戻ります。

ダリダが恋愛した相手は、次々に自殺しました。順番からすると、ルイジ・テンコ(サンレモ音楽祭で競演)、リュシアン・モリス(初婚の相手・元マネージャー)、リシャール・シャンフレ(テレビ司会者・歌手)の3人です。おまけに、親友のマイク・ブラント(歌手)も自殺しています。ダリダ自身も自殺したことを思うと、まるで、自殺シンドロームが伝播して行ったかのようです。

ところが、ジャン・ソヴィエスキは、生き残りました。彼だけが画家だという点から推察すると、絵を描くことで客観的に自分を見つめることができるからなのでしょうか?彼は、現在84歳で、まだ絵を描いているのだそうです。