大映映画を代表する二人の共演作というのは、正直言って、思い浮かばない。
勝新と京マチ子は賢姉愚弟という設定だ。
勝ち気で商売上手な姉と、散財と喧嘩に明けくれる弟、そのために弟はいつまでたってもお姉ちゃんに頭があがらない。
やんちゃをした勝新の頭を京マチ子が小突くシーンが出てくる。
当時、大映の看板俳優であった勝新に、そんな大それたことが出来るのは、大先輩であり大女優の京マチ子しかいないだろう。
このシーンに出会えただけで、この映画を見た甲斐があった。。
勝新との悲恋に泣くヒロインを安田道代が演じていた。
いい女だ。
悪辣な親分・山本麟一の小賢しい代貸役に岸田森という、思いがけないキャスティング。
労咳病みの刺客に松方弘樹。
まだ若くて線の細かった頃の松方弘樹だ。
いぶし銀の水島道太郎と美川陽一郎、今回はおいしい役に回った北村英三。
勝新といっしょに殴り込みをかける津川雅彦、和崎俊也、もうひとり名前が分からないが沖仲仕のボースン役の人。脇役陣の一人ひとりが輝いている。
見ていて、同じストーリーとセリフを使って、今の俳優たちで本作をリメイクしたら面白いだろうなあと思った。
脚本が本作の4年後に『仁義なき戦い』を書くことになる、笠原和夫だった。
隠れた名作。