「JAL再建をめぐるホンネ」 | 江戸摩呂日記 ~メディア千本ノック~

「JAL再建をめぐるホンネ」

日航決算に「利益操作の疑い」と書いた政投銀リポートの波紋(週刊エコノミスト2007年4月10日)


 大型連休では、飛行機に乗る方も多いやろう。今回は、経営再建にいそしむ日本航空(JAL)をめぐる記事を取り上げたいと思うんや。


 JALのメーンバンクは、意外なことに政府系金融機関の日本政策投資銀行(来年10月に株式会社に移行、その後完全に民営化することが決まっとる)、要は、資金が焦げ付いた場合は税金で穴埋めしはるとゆーことだ。記事によると、2003年2月に政投銀の研究員が発表した「利益操作の研究」と題するリポートに、JALの「機材購入時での値引き等に関連する機材関連報奨額の処理や長期為替先物予約に係る為替差損の簿価算入等の問題も利益操作の疑いがある」と指摘した。要は、JALはインチキ決算をしてる疑いがあるとゆーことや。

  「機材関連報奨額の処理」の場合、航空機購入の際にボーイングなどが値引きした額を「営業外利益」に計上することで、この結果、自己資本の「利益剰余金」が過剰に計上されるとゆーことや。例えば、定価百円のものを七十円で購入したのに、帳簿には百円で購入し、値引き分の三十円を「営業外利益」とする。「航空機を購入するたびに利益が増える一方で、余分な出費を出し、自己資本が実態以上に膨れるというカラクリや。こんなおかしな会計処理は、ANAを含めて日本の航空業界だけで長年続いたが、批判を受けて2006年3月期決算から修正した。そやけど、かさ上げした自己資本はそのままだとゆーんや。前回このブログで紹介したジャーナリストの町田徹氏も以前からJAL問題の根深さを指摘(朝日新聞2007年2月10日「政投銀の支援は時期尚早」)してはって、「06年3月期末に1480億円とした自己資本は、適正には636億円だった」と主張している。再建計画の前提になっている決算がかさ上げされていては、完全復活できないのは明らかだそーだ。


 エコノミストの記事ではリポートの衝撃を伝えておる。「今国会でも取り上げられ、永田町も巻き込む騒動に発展した。これで困ったのは、融資要請を受けた銀行団。2月に日航が発表した再建策を受け、約600億円の融資を政投銀、みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友などの主力銀行が応じる計画だった。メーンバンクからかつて出されていた”本音”とも思われる指摘に、銀行団の足並みが一時乱れかけた(最終的に融資契約は結ばれた)」。だが、問題なのはこれを取り上げた新聞やテレビはほとんどなかったことや。
 経済報道でマイナス材料を扱う際は、特に市場への影響の大きいとして経営者や役所の言い分しか伝えない、”お行儀の良い報道”ですませることが多い。けど、JALの場合は政府保証のある資金が投入されている上に、個人株主の割合が非常に高いことからも、むしろ積極的な情報提供を行わなければ混乱を招くのではないやろうか。この政投銀リポートも、丁寧に用語説明をし実際の決算の数字を拾った上で専門家の話を紹介すれば、経営陣がこの債務が隠されていることが明らかになり、JALには抜本的な再建策が必要なことが分かるだろう。確かにマスコミ各社はJALから巨額の広告宣伝費と取材の際の座席の便宜などを受けているが、これ以上及び腰の報道を続けているようでは今度はマスコミが読者離れの制裁を受けるだろう。