「あーもう!逃げるなって言ってるそばから、あんたは-----!!」
キャンパスの一角。
飼料臭と薬品臭と動物の体臭が漂う建物の中で、甲高い声がこだました。
犬の去勢手術をしていた教授がピクリと眉を上げ、対面で助手をしている女性をちらりと見る・・・
「・・・加藤くん、またあの子かね・・・」
「ほかにあんな遠慮なく動物に怒り出す学生なんていないと思います・・・」
「ふむ・・・少し声を落すように言っといてくれ、患畜がおびえている」
「教授が言ったらいいじゃないですか・・・」
「なんだか、あの子は苦手でなぁ・・・小さい子を叱っている気分になるんだよ」
「はいはい」
老教授のわがままに、ゼミの中でも古株の加藤は渋々従った・・・
「こらポール!そっち行かないの!ってシロ!ハムスターは食べ物じゃなーい!!」
教授は5秒ほど動きを止めた後、思い出したように作業を再開しながらつぶやく。
「熱心なのは、いいんだがなぁ・・・」
・・・・・・
・・・
「そっち行くなー!!言う事聞けーーー!!」
「はいはい佐倉、叫んだらよけいに逃げるでしょうが」
「あ、加藤先輩」
「教授が怒ってたわよ、大声出しすぎ」
「う・・・ご、ごめんなさい」
バタバタと逃げ回る、犬、猫をひょいひょいと捕まえ、加藤は振り返った。
「で?どうしてこんなに逃げ回ってるの?」
「あ、あはは・・・檻の鍵、どれ外せばいいかわからなくて」
黒髪ショートの少女、佐倉亜矢の背後にはプラプラと揺れる檻の扉全部で4つ
「なんでそんなに開けるの・・・」
「ごめんなさい」
「ひとつ閉めてから、ひとつ開ける!」
「うぅ・・・ごめんなさい」
しゅんと小さくなる亜矢。
加藤は両手にばたばたと暴れる犬猫を気にしつつも、
ちょっとだけ教授に共感する。
この姿は、後輩というよりもたしかに『小さい子』だ。
ものすごく大人気ない事をしている気分になる。
溜め息をつき、犬猫を抱えなおして、加藤は改めて亜矢に向き直った。
「で、なんで開けたの?掃除とかするんじゃなかったの?」
「あ、そうですけど」
「今のうちにやっちゃいなさいよ」
「で、でも逃げた子をほっとくわけにもいかないし」
「だいじょぶよ、出口は一箇所しかないんだし逃げられないわよ」
小動物の檻は目が細かいので飛び掛ったところで食べられるわけでもない。
しかし、それでもちゃんと捕まえてから作業しようとするのが、亜矢の不器用なところだった。
もっと要領よくやればいいのに・・・と加藤は思う。
捕まえていた犬猫を放り出して、加藤は檻の中に手を突っ込んでえさ皿とシートを取り出す。
「ほら!猫追っかけないの!シロはもう明日退院なんだから、のんびり屋のポールにつかまる訳ないでしょ」
「でもっ」
「いいから!」
亜矢の変わりに次々と掃除をしながら加藤は何度目かの溜め息をついた・・・
とまぁ・・・
始まりはこんな感じですw
話が完結するまでもうしばらくありますが
気長に気楽に見てくださいw
一応毎日、話が進めばと思っています。