東京メトロ地下鉄半蔵門線は渋谷でその名を東急田園都市線に変えながらも、やはり東京の地下深くを西へ西へと這い、やがて多摩川を目前にしてようやく地上に姿を現す。
ロンドンへの道を最後まで確実にすることのできなかったOQT最終セルビア戦の朝、いつまでも出口の見えない全日本のごとく地下鉄に揺られていたわたしは、長いトンネルを抜けたことを知らせる車内に差し込む太陽の光をいくぶん眩しく感じながら二子玉川駅に降り立った。
午前9:30。見渡すかぎり蒼く澄み渡った5月の空。
目指すは駒沢大学玉川キャンパス体育館。
5月27日(日)、関東大学リーグ1部2部入れ替え戦が行われた。
東女体(1部7位)vs 大東文化大(2部2位)
日女体(1部8位)vs 早稲田大(2部1位)
これでホントに春はおしまい、と思いつつ会場に入ると「すみません。入場料とってます。」と申し訳なさそうに声をかけられた。「いいですよ。いくらでも払って差し上げましょう。」「1,000円です。」わたしは財布から一万円札を抜き取ったつもりで「おつりはけっこう。」とふんぞり返ろうとしたが、取り出したそれは紛うことなき千円札だったのでそのまますごすごと観覧席に向かった。
「おおーっ。せまい。」館内は特設コート一面仕様でしたが2面とったらかなりうしろからサーブに入る江畑選手や東レ高田ありさ選手は普段のサーブが打てないんじゃないかななどと思ってみたりしてました。
その観覧席ですがやはりフロアには設営されておらず2階席だけなのですが、こちらも三菱東京UFJ銀行同様4方のうち一方だけの造り。でも座席は階段状にこじんまりとですがしつらえてありました。
狭かったからかもしれませんが観戦者は多く感じました。それでも身内がほとんどでしょう。あとラインズマンは他校が務めるため日大ともう一校がそれぞれ仕事のないとき観戦してましたか。
第一試合。大東文化はGSS須江選手の母校ということもあり応援したんですが負けてしまいました。
東女体 3-0(25-23、25-14、25-22)大東文化。
東女体っていうのは、実はホントに選手が把握出来なかったチームで、それというのもリベロの2松田選手のほか下手をするとコート上の6人がみな背番号30番台ってこともあってすんごい見分け辛いんである。33、34、35、36、37、38とか。
ま、28志智選手はほぼフル稼働ですのでそれはないかもしれませんが、それにしたって28です。動体視力のないわたしには優しさを感じにくい背番号でした。
その東女体が踏ん張りました。わたしに選手の顔と背番号を覚えさせる宿題を残してくれたのだとありがたくおもっています。
第2試合。スタメン。
日女体 1三浦、6西巻、7百瀬、10内田、19田中、セッター11廣田、リベロ5新井。
早稲田 1町田、4濱野、9小暮、14関根、15唐木、セッター10黒木、リベロ5高橋。
(だとおもう!)
いきなり第一セット早稲田が走った。2-12。どうした日女。4-14。
そんななか日女も面白いことをやっていた。ラリーでリベロ5新井ミドルの19田中(1年生)にダイレクトデリバリー。これは勇気あるでしょう。真後ろからのレセプション乱れても速攻。(空振りしても相手コートにトスフェイントになるか?)
とにかく大学リーグは攻撃的なリベロがいるということだ。
第一セットは早稲田がとる。25-16。
第2セット以降半分寝ぼけてた第一セットかと思える日女が奮起してシーソーゲームが展開された。詳しいことはもう誰かに任せた。
一部復帰。一部残留。この意地と意地とのせめぎ合いに夢中になりだしたわたしの中ではただただ残像が記憶の端々にとどまっているだけで細かなことはもう覚えていない。
19サーブいいなー。9いいの打つじゃん。とか15よし。とか知らず知らずつぶやいているのである。(あぶないおやじだ)
と、そのとき、試合が止まった。
早稲田の4濱野MB(3年)がうずくまって起き上がれない。
ブロック着地で足に乗ったか?
しばらくして起き上がってプレイに戻ろうとする。いや、ちょとまて。
びっこ引いてる。ひねったあとすぐになら動けそうな気がするものだ。
びっこ引いてる。やめとけ。やめさせてあげてくれ。
交代が告げられた。告げられるとともに濱野はもっとひどいびっこを引いてアップゾーンに肩を借りて下がった。
悔しいだろうがこれで終わりじゃないんだ。身体がびっこを求めているのに逆らうことはない。今自分の足がどうなっているのかを一番大事に冷静に見よう。
177cmの濱野に代わって早稲田は4年生の2篠159cmを入れてきた。
これはサーブのいいレシーバーをミドルS1のとき起用してリベロはレフトかオポに代わってディフェンス強化という大学リーグでは見なくはない交代ですがいまは前衛です。試合は不謹慎にも俄然楽しくなりました。日女は篠選手のポジションにセットを上げてきます。一方MBたる篠選手にWSがついてなんとか2枚で対抗します。
ベンチサイドではチームメイトのサポートを受けてアイシングをする濱野選手の姿が最後までありました。
早稲田 第2セット 25-21。
第3セット 21-25。
第4セット 25-21。
早稲田が1部昇格を決めました。
決まるとともに選手たちから溢れ出す涙、泪、ナミダ。
こんな舞台でもそれはある。
理由などない。感極まっておもわず堰を切るのだろう。
それは彼女たちの笑顔が証明している。泣き笑いのぐずぐずの笑顔が証明している。
このひと時が、わけなどいらない一瞬の永遠だと証明してくれている。
負けて降格の日女。試合後円陣を組んでミーティングをしていた。
そこには涙なんかはなかった。涙なんかいらない。歴史を築いた先達に申し訳ない気持ちはあるかもしれないが、うつむいてばかりじゃないんだなと、何人かを見て思ったかな。
早稲田の選手たちは帰りかけのわたしの目の前を行き交い応援のねぎらいに応えながらやがて体育館のすぐ外で円陣を組んでいた。そこに足首を固定した濱野がチームメイトの肩を借りて加わる。キャプテンの1町田が音頭をとる。
しばしの歓喜に酔い秋には1部リーグだ。
じっくり身体を休めて、そして鍛えて秋のリーグでまた見せてくれることを楽しみにしています。
お疲れ様でした。
てか、いい試合だったなあー。
試合後、バス停でこちらに歩いてくる女性がどこかで見たことあるなと思っていたら青学の14望月選手だと気付いた。なぜここに?とおもいつつ、思わず「望月か?」と、すれ違いざまつぶやいてしまった。むこうも気付いたらしく振り返って友達に駆け寄る。
見ると振り返っていたので、ああー今から思うとちゃんとお辞儀して(言葉じゃなくとも)いつも見させてもらってます。って意思表示ぐらいはしといた方が失礼無かったかなと思ったりしてます。なにせいくら重量弾をかかえた爆撃機たる彼女たちでも普段は普通の女性ですから。
デリケートでナイーブでとても普通のセンスでは太刀打ち出来るものではありません。