『銀幕便り・『レスラー』・後編』 | 高山猛久ブログ「高山猛久のMY PRIVATE PRESS FACTORY」 by Ameba

『銀幕便り・『レスラー』・後編』

感動の名作を見て、その余韻を楽しんだ後、前回のブログを更新。


久々、自分の中でヒットの名作に「これは、書きたい事沢山あるだろっ」と、あえて前編とさせていただきましたが、


家に帰って、パンフレットを入れたはずの、ビニール袋の中身をのぞくと・・


ない!?


確かに購入したはずの、パンフレットが入ってねぇでねぇか・・。


ミッキー・ロークのインタビューでも読みながら、記事を書こうとしていたワタクシの心は、完全に折れてしまいましたよね。


なんでも、同時に、英語版のレスラーの脚本を購入していたため、店員さん、パンフレットの方、入れ忘れたんだそうな・・。


店員「はい、確かに購入記録はありますんで、どういたしましょう?」


「じゃ、とりいきますわ・・」


店員「いつごろ、取りに来られますか?一週間ぐらいなら保管できますが・・」


「じゃ、ちかじかDASH!


ってんで、冷めてしまったワタクシのハートを今一度、燃え上がらせる事はとても難しく、今日まで後編の更新が延びてしまったと言うわけであります。


はい、言い訳はこの辺にしておいて・・


『レスラー』
ランディー(ミッキー・ローク)は、全盛期には雑誌の表紙を飾り、スタジアムを埋めるほどの、栄華を極めたカリスマプロレスラーであったが、20年の時を経て、田舎町のどさ回り、トレーラーハウスの家賃すら払えないほどに落ちぶれていた。日に日に衰え行く肉体の苦痛・・。
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そんなランディーに、全盛期の宿敵、アヤットラーとの試合の話が舞い込む。レスラー人生最後のチャンスと、前哨戦では、流血しながらのデスマッチを繰り広げる・・、が同時に心臓発作に襲われる事になってしまう。絶縁状態になっていた、一人娘のステファニー。
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唯一の心のよりどころである、馴染みのストリッパー、キャシディ。失ってしまった普通の男としての生活を取るべきか、それともレスラーとしての最後のチャンスを取るべきか・・。しかしそれは、ランディーにとて、まさに命をかけた選択となるのだった。
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なんなんでしょう、男だったら(よく使うなこの表現)大なり小なり、必ずいつかは、突きつけられる選択なんじゃないでしょうか?そして、それを支える女性達。

主人公はもろ男なんですが、これは女性が見ても、感じさせられる事は多いんじゃないかなと。


ミッキー・ロークは今回のノースタントの、レスリングシーンに向けて、三ヶ月間のプロのトレーニンングを強いられたそう。そして、「三ヶ月のプロレスで、16年間のボクシングよりも、多くの怪我をした」と語るミッキー・ロークは最初の二ヶ月間で三回のMRI検査を受けるほどのハードワークだったという。
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脇を固める、キャシディ役のマリサ・トレイは『いとこのビニー』では天真爛漫、可愛い女の子を演じアカデミー助演女優賞を獲得。『イン・ザ・ベッドルーム』では、暴力亭主に、若い恋人を殺される悲劇のヒロインを演じ各賞を総なめ。個人的にも印象的な女優だった、彼女の渾身のストリッパー役の、孤独な女性の不器用な恋愛の心理描写にはしびれましたね。
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娘のステファニー役、エヴァン・レイチェル・ウッドも、父親に捨てられたトラウマを抱える少女の複雑な感情を完璧にこなしていた。そんな彼女の事を「彼女は特別な女優だ」と語るミッキー・ロークは「オレが二十歳の時なんか、台詞もまともに覚えられなかったんだぜ」と・・・うん、よく俳優で成功したよな・・。


そんな破天荒なミッキー・ロークは前回ご紹介した通り、地でランディーの人生を体現しているような俳優。

今回の『レスラー』で、各賞を総なめ、ランディー役と共に見事にカムバックを果たしたのでした。


そして注目すべきは、本年度アカデミー主演男優賞を、争ったショーン・ペンは見事受賞したが、その際にも「ミッキー・カムバック」の賛辞を送った。

他にも、ミッキー・ロークどん底時代に、復活のチャンスを与えた人は、『プレッジ』監督時のショーン・ペンだけではなく、『バッファロー66』監督のヴィンセント・ギャロほか、シルベスター・スタローン、フランシス・フォード・コッポラなど。

タランティーノはあの『パルプ・フィクション』のブルース・ウィルスの演じた、ボクサー役のオファーを最初にミッキー・ロークに出していたそう。(似てると思ったんだ・・。)それが、実現していたらまたもの凄いフィルムになっていた事でしょうね。


そして、今回のサントラにオリジナル曲を提供したブルース・スプリングティーンもまた、制作費がカツカツである事を知ったミッキー・ロークの「好意に甘えさせてくれ」という内容の一枚の手紙から、ツアーの最中、快く「レスラー」を書き下ろしたのだそう。

こうして、見てみると、自殺をも考えた事があるという、ミッキー・ロークの奈落の底にも落ちた人生の中で、彼のどこか人に愛される人となりが見えて来ますね。


成功に不器用な男、ミッキー・ロークの人生があったからこそ、この映画は完成させる事ができたんじゃないでしょうか。

監督のダーレン・アロノフスキーが、ニコラス・ケイジを退け、スタジオからの制作費大幅カットをも受け入れてまで、ミッキー・ロークの起用を押し通したのは、結果的に大成功を生んだんですね。かっけー。 


そんな男気満載の、『レスラー』見逃すエピソードはありません。プロレスファンはもちろんの事、ミッキーの全盛期の頃のファンの方、また「ミッキー・ロークなんて知らねよ」なんて方にまで幅広くおすすめします。どぉぞ('-^*)/